Ampelomyces sp. no.1

Ampelomyces sp. no.1

Ampelomyces sp. no.1
アンペロミケス属菌。11月20日撮影。

[特徴]
うどんこ病菌の菌叢中に分生子殻を形成する。肉眼では黒褐色の粉状、うどんこ病菌の菌叢は薄黒く煤けたようになる。 分生子殻はうどんこ病菌の分生子柄の先端付近の細胞内に形成され、亜球形、楕円形、広紡錘形、長円形などで、淡褐色、平滑、末端側はやや截頭形、細く短い無色の菌糸を寄主の菌糸内に伸ばす。 分生子殻表面は径 3.5-6 μm. のやや厚膜で淡褐色の多角形細胞からなる。明瞭な孔口は確認できず、押し潰すと大量の分生子が放出される。42-58 × 25.5-37.2 μm. -- 分生子は楕円形で時にやや左右不対称、無色、薄壁、平滑、両端近くに小油球がある。5.4-8.6 × 2.8-3.0 μm.

[コメント]
ウバメガシ上のうどんこ病菌の菌叢(子嚢殻を確認できなかったが、おそらく Erysiphe quercicola)に発生していたもの。 市街地の生垣等でも普通に見られ、菌叢表面が煤けたようになるので肉眼でも寄生されているのがわかる。 ウバメガシ以外のうどんこ病菌の菌叢にも発生し、顕微鏡的な特徴に目立った差異はほとんどない。 古くはうどんこ病菌の分生子殻と考えられたこともあり、うどんこ病菌の子嚢殻内に寄生する場合もあるようだが、まだ観察したことがない。寄生されたうどんこ病菌は胞子形成が阻害される。 寄主ごとに細分された多くの種が記載されているが、従来は Ampelomyces quisqualis Ces. ex Schlecht. 一種とされることも多かった。 最近の研究では複合種と考えられていて、Németh et al. (2021) によれば日本産の Ampelomyces 属菌もいくつかの系統にわけられるようだ。 種形容語の "quis qualis" はラテン語で "いったい何者?" というような意味らしいが、その名の通りまだ正体がよく判らない、という事か。

[参考文献]
Hashioka and Nakai (1980): Ultrastructure of pycnidial development and mycoparasitism of Ampelomyces quisqualis parasitic on Erysiphales. (Transactions of the Mycological Society of Japan ; 21, p. 329-338).
Németh et al. (2021): Ampelomyces strains isolated from diverse powdery mildew hosts in Japan: their phylogeny and mycoparasitic activity, including timing and quantifying mycoparasitism of Pseudoidium neolycopersici on tomato. (PLoS ONE ; 16(5):e0251444).

[初掲載日: 2022.02.11] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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