Biscogniauxia maritima

Biscogniauxia maritima

Biscogniauxia maritima Vasilyeva
クロイタタケ属菌。8月25日撮影。

[特徴]
子座は樹皮下に生じ、後に樹皮を破って表面に現れる。縦長で不正形平板状の大型の子座を形成し、8-30 × 3-10 cm. 程度までになり、さらに融合して長さは 50 cm. 以上になることがある。 表面は灰白色で時にやや青みを帯びて見え、つやは無く、子嚢殻の孔口が黒色点状に散らばり、僅かに(15 μm. 程度)突出する。 厚さは 0.5 mm. 程度まで、炭質で脆く、内部は黒色。子座は基質から比較的剥れやすく、剥れた底面は黒色で子嚢殻の後が残る。 子座上面の樹皮は子座の成熟後には脱落する。めくれた樹皮の内側(子座に接していた面)は灰白色、子嚢殻孔口の跡が小さくくぼんで黒い点状に残る。-- 子嚢殻は細楕円形ないし円筒形、子座中に一層に密に並び、径 160-220 μm. 程度、子座表面の孔口の密度はこれより僅かに疎らなので複数の子嚢殻が一つの孔口を共有することがあると思われるが詳細を確認できない。-- 子嚢は円筒形、短い柄があり、先端は肥厚し、先端リングは径 4-5 μm. 程度の短い筒状でメルツァー試薬で青変する。8胞子をほぼ一列に生じる。 計測できた子嚢の数は少ないが、120-150 × 10-14 μm. 程度。-- 明瞭な側糸を観察できなかった。-- 子嚢胞子は広紡錘形、時に僅かに左右不対称、暗褐色、平滑、側面の平らな側にほぼ全長に亘る直線状の発芽スリットがある。被膜や付属糸は見られない。13.7-14.9 × 7.0-8.3 μm. -- めくれた樹皮下面には淡色膜状の組織がある。厚さ 50-70 μm. 程度まで、径 9-12 μm. 程度の長楕円ないし円柱状の薄壁の細胞からなり、細胞間には黒褐色の物質が付着する。 子座下部には厚さ 100 μm. 程度の無色でやや軟骨質かと思われる層があるが、組織の詳細を確認できない。

[コメント]
コナラ (Quercus serrata) と思われる倒木に発生していたもの。周辺にある褐色クッション状の菌はボタンタケ類 (Hypocrea sp.) で未同定。 コナラ属の倒木にかなり普通で、比較的新しい倒木に広範囲に拡がる。飛散した子嚢胞子で周辺が黒く汚れることも多く、その場合は子実体表面は黒っぽく見える。 極東ロシア沿海地方のモンゴリナラ (Q. mongolica) から記載された種で、Ju et al. (1998) のモノグラフでは B. atropunctata (Schwein.) Pouzar の変種とされているが、 升屋・服部 (2015) によれば系統的に明確に識別できることから独立種とされている。

[参考文献]
Ju et al. (1998): The genus Biscogniauxia. (Mycotaxon ; 66, p. 1-98).
升屋・服部 (2015): 日本新産種 Biscogniauxia maritima の形態と生態. (日本菌学会大会講演要旨集 ; 59, p. 19).

[初掲載日: 2019.09.24] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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