Bulgaria inquinans

Bulgaria inquinans

Bulgaria inquinans (Pers.: Fr.) Fr.
ゴムタケ。5月15日撮影。

[特徴]
子実体は倒木上に群生する。初めは頂部が孔状にくぼんだ球状で硬い寒天質だがのち肉厚の椀状に開き、さらには倒円錐形や洋コマ形になり軟らかくなる。直径 3 cm. 程度まで。 子実層面は黒色、新鮮な時は僅かにつやがある。外面は茶褐色で濃色の粒状ないし糠状の鱗片が散在する。肉は厚く、全体が半透明淡褐色の寒天質で霜降り状の模様がある。-- 子嚢は円筒形、かぎ形構造から生じ、下半は細長く伸びる。先端は肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変する。 8胞子を生じるが普通は大型の4胞子と小型の4胞子を生じる。小型胞子は2列になって固まる場合が多いが子嚢内での位置は一定しない。110-180 × 9.0-12.5 μm. -- 側糸は糸状、隔壁がある。径 1.0-2.0 μm.、先端は次第に細くなって鞭状、時に分岐し、屈曲し、あるいは不規則ならせん状になる。 半ばから先端近くにかけて黄褐色を帯びるものが多く、外面にヤニ状の物質が付着し厚膜になっているように見える。-- 大型の子嚢胞子は卵形ないし左右不対称で類三角形、暗緑褐色、やや厚膜、平滑、数個の油球を含む。胞子紋は黒。 側面の平らな側に、直線的な全長のほぼ8割程度の長さの発芽スリットらしき条線があるがやや不明瞭。11.5-15.4 × 5.1-6.8 μm.。 小型胞子はやや淡色ないし殆んど無色。楕円形ないし卵型。7.1-8.7 × 4.0-4.6 μm. -- 托組織は無色のゼラチン質に包まれた疎らな絡み合い菌糸組織で、径 1.5-2.5 μm. の隔壁と分岐のある薄壁の菌糸よりなる。 外皮層との境界付近では菌糸は密になってほぼ平行に走り、やや褐色を帯び径 4.5 μm. までになる。 外皮層は淡褐色で厚膜の楕円ないし棍棒形の 11-35 × 5-18 μm. の細胞がやや鎖状に並ぶ円形菌糸組織で、時に房状に盛り上がる。 細胞は時に粗面で、淡褐色のかさぶた状の付着物が細かくひび割れている様に見える。

[コメント]
コナラ、クヌギなどのブナ科の比較的新しい倒木に群生する。シイタケの榾木に発生する事も多い。托組織は一様ではなく、肉眼では霜降り状に見える。 構成菌糸が部分的にソーセージ状に膨らんでやや密になり、周囲のゼラチン質が褐色を帯びる(あるいは菌糸にヤニ状物が付着している)ようだが、明瞭には観察できなかった。 食用にできるとされ、「宮崎のきのこ」(黒木秀一, 2015)にはそのまま生食していた経験談が紹介されているので、食べてみた。特に味は無く、わらび餅のような食感である。

[別図2] 5月22日撮影。

[参考文献]
Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. vol. 1.
Dennis (1981): British Ascomycetes. Rev. ed.

[初掲載日: 2005.05.19, 最終更新日: 2018.06.01]