Chlorociboria aeruginella

Chlorociboria aeruginella

Chlorociboria aeruginella (Karst.) Dennis ex Ramamurthi, Korf & Batra
クロロキボリア アエルギネラ。11月11日撮影。

[特徴]
広葉樹落葉の主に葉脈上に散生する。子嚢盤は径 1 mm. まで、椀形から皿状に開く。 子実層面は淡青緑色、縁は微毛状で白っぽく見える。外面も淡青緑色でほとんど平滑、柄は中心性で短くやや濃色。-- 子嚢は棍棒形、基部にはかぎ形構造があり、先端は肥厚し頂孔はメルツァー試薬で小さく青変する。8胞子をほぼ2列に生じる。51-60 × 5.4-7.1 μm. -- 側糸は糸状、基部付近で分岐し、隔壁がある。上下同幅、先端は丸く、径 1.5-2.0 μm.、内容物はほぼ無色。-- 子嚢胞子は楕円ないし長卵形、僅かに左右不対称、無色、薄壁、平滑。両端近くに不明瞭な内容物がある。8.5-10.0 × 2.2-2.8 μm. -- 托組織の詳細を確認できなかったが、髄層は絡み合い菌糸組織、外皮層は矩形菌糸組織からなり、表面細胞には青緑色の不定形物質が付着する。 縁部には無色薄壁の長い円筒形の細胞がやや房状に並ぶ。先端は丸く、表面は平滑だが、時に青緑色の細かい顆粒状物質がまばらに付着する。30-42 × 2.5-3.5 μm.

[コメント]
落葉樹林地上の落葉に生じていた物。 ヨーロッパでは Filipendula 属(シモツケソウ属)等の枯茎に発生するというので、同定には疑問が残っている。 採集した落葉は腐朽がかなり進んでいて判別が難しいが、シモツケソウ類でないことは確かで、おそらく落葉樹のものと思われる。 付近で拾い集めた落葉のなかで似ていると思ったのはコバノガマズミ (Viburnum erosum)。 ロクショウグサレキン属菌は、腐朽材上に発生し周囲の基質を青緑色に染めるのが一般的な特徴だが、落葉表面に緑変は認められず、 子実体の発生している部分の組織をカミソリで削いでみたが、緑変性は確認できなかった。 落葉に生じる点も、ロクショウグサレキン属菌としてはやや異質な印象を受ける。 Dixon (1974) は Dasyscyphus 属(現在は Lachnum 属のシノニムとされる)に置き、Dasyscyphus aeruginellus (Karst.) Korf & Dixon としている。 なお、赤井 (1934) がウルシ材上から Chlorosplenium aeruginellum (Nyl.) Karst. として報告しているが、 報文中で Saccardo の記載を "Ulmus [ニレ属] 上に生じ ..." と引用している。 原文 (Syll. fung., VIII, p. 316) は "ad caules Spireæ Ulmariæ putrescentes ..." となっていて、 セイヨウナツユキソウ (Filipendula ulmaria = Spiraea ulmaria) の枯茎上であり、誤訳だろう。赤井の菌は別種と思われる。

[参考文献]
Dennis (1956): A revision of the British Helotiaceae in the herbarium of the Royal Botanic Gardens, Kew, with notes on related European species. (Mycological papers ; 62).
Dixon (1974): Chlorosplenium and its segregates. I. Introduction and the genus Chlorosplenium. (Mycotaxon ; 1(2). p. 65-104).
Krieglsteiner (2002): Pilze im westfälisch-hessischen Grenzgebiet II: Die Grünspanbecherlinge Chlorociboria aeruginella und Chlorociboria aeruginosa. (Boletus ; 24(2), p. 89-95).
Ramamurthi, Korf and Batra (1957): A revision of the North American species of Chlorociboria (Sclerotiniaceae). (Mycologia ; 49. p. 854-863).
赤井 (1934): 綠變材を基因する Chlorosplenium 屬菌に就いて. (植物及動物 ; 2(5), p. 14-20).

[初掲載日: 2017.12.08]