Colpoma quercinum

Colpoma quercinum

Colpoma quercinum (Pers.) Wallroth
コルポマ クエルキヌム。5月3日撮影。

[特徴]
落枝に群生する。樹皮下から発生し、樹皮を破って薄い唇状の子嚢盤が現れる。形は真直ぐのもの以外に「へ」の字形になったりするものもあるが、 子嚢盤の長軸は概して枝の軸に直交するものが多く、3-8 × 1-1.5 mm. 程度。裂開前の上面は淡赤褐色ないし灰褐色で粗造なかさぶた状。 成熟した子実体は湿ると裂開して幅 2-3 mm. 程度に開いて楕円形ないし広紡錘形になり、子実層面が現れる。 子実層面は平滑、裂開直後は淡黄色ないし黄白色でツヤがあるが、後に退色して灰色を帯びる。縁の内側は黒く縁どられて時に青みを帯びる。-- 子嚢は長い尾のある棍棒形、薄壁、先端は殆んど肥厚せず、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を束状に生じる。220-270 × 9.0-11.2 μm.、胞子部分は 90 μm. 程度。-- 側糸は糸状、無色、基部付近で分岐し、隔壁がある。径 1.2-1.8 μm.、先端は殆んど膨らまず、2-4回程巻いた緩やかでやや不規則な渦巻き状になり、子実上層を形成する。-- 子嚢胞子は糸状でほぼ直線的、無色、薄壁、先端は丸く、しばしば小さく折れ曲がり、末端は次第に細まって尖る。明瞭な隔壁は認められない。全体に薄い被膜があり、先端部ではやや厚い。55-78 × 2.0-2.5 μm. -- 子実下層は黒褐色、径 4-6 μm. 程度の多角形細胞からなる。縁部の組織は径 4-8 μm. 程度の淡褐色の多角形細胞からなり、黒褐色の不定形物質に被われる。

[コメント]
ブナ林内の落枝に発生していたもの。比較的細い落枝に多く、落枝の種類は同定できていない。子実体周囲の落枝材中にはかなり明瞭な黒い帯線が形成される。 主にコナラ属 (Quercus sp.) の樹木に発生し枝枯れ性病害を起こすが、病原性は比較的弱いようである。小口 (1993) は北海道のミズナラから記録し、「ミズナラ枝枯病」の名を与えている。 アナモルフは Conostroma とされるが観察できなかった。

[別図2] 5月3日撮影。乾燥状態の子実体。湿室に入れると半日ほどで裂開して子実層が現れた。

[参考文献]
小口 (1993): Colpoma quercinum によるミズナラ枝枯病. (日本林学会北海道支部論文集 ; 41, p. 61-62).

[初掲載日: 2018.08.10]