Desmazierella acicola

Desmazierella acicola

Desmazierella acicola Lib.
マツバノヒゲワンタケ。3月29日撮影。

[特徴]
子実体はマツ類の古い落葉に単生あるいは少数が群生する。 子嚢盤は肉厚の皿状、時に子実層面が凸型になりクッション形、直径 1.5-3.0 mm.、子実層面は灰色からやや淡黄褐色を帯び、全面に黒褐色の剛毛をまばらに生じる。 外面は黒褐色の剛毛が密生し、縁部の剛毛は長く伸びる。柄は無く、基質にかけて黒褐色の菌糸が伸びる。内部はくすんだ白色で肉質はかなり丈夫。-- 子嚢は円筒形、有蓋、やや厚膜、メルツァー試薬で呈色せず、8胞子を一列に生じる。 下半はやや屈曲し、基部はときに二叉分岐し、あるいは虫垂状の突起がある。220-260 × 12.0-16.8 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり無色、径 1.5-2.5 μm. 先端付近で分岐し先端は棍棒状あるいは細紡錘形に膨らんで褐色厚膜になり表面には密な細疣がある。 幾つかの側糸は先端がさらに伸びて剛毛状になって先端は尖り、子実層から 200-350 μm. 程度突出する。剛毛状部分の最大径は 12.8 μm. になる。-- 子嚢胞子は楕円形、無色平滑。両端近くに泡状の内容物がある。19.4-20.6 × 11.0-11.5 μm.、射出された胞子は無色の被膜に包まれる。-- 托髄層は絡み合い菌組織、無色薄壁で直径 6-9 μm. の菌糸よりなる。 外被層は数層の丸みを帯びた無色の多角形細胞よりなる。最大 45 × 30 μm. まで。最外層の細胞からは黒褐色の剛毛状菌糸が立ち上がる。 短いもので 20-30 × 4.0-4.8 μm. 程度、少数の隔壁がある。縁付近のものは長さ 750 μm. に達する。-- 基質表面に伸びる菌糸は、褐色厚膜で平滑、隔壁があり、緩やかに曲がりくねる。直径 4.2-5.0 μm. -- 子実体付近の落葉表面ではアナモルフの分生子柄が褐色の短い剛毛状に立ち上がるのが観察できることが多い。

[コメント]
春先にアカマツ (Pinus densiflora) の古い落葉(まれに細枝)上に生じる。 「日本のきのこ」(山と溪谷社)には海岸のマツ林に発生するとあるが、内陸部である京都市近郊のアカマツ林や京都御所のマツ樹下にも発生し、落葉層のやや下の方に多い。 小型で目立たないためか国内ではあまり記録は多くないようだが、アナモルフ Verticicladium trifidum Preuss と共に分布の広い普通種と思われる。

[別図2] 4月13日撮影。

[参考文献]
Otani (1980): Sarcoscyphineae of Japan. (Trans. mycol. Soc. Japan ; 21, p. 149-179).

[初掲載日: 2008.04.04, 最新更新日: 2015.05.04]