Erioscyphella abnormis

Erioscyphella abnormis

Erioscyphella abnormis (Mont.) Baral, Šandová & Perić = Lachnum abnorme (Mont.) Haines & Dumont
エリオスキフェラ アブノルミス。5月14日撮影。

[特徴]
子嚢盤は有柄、初めはほぼ球形、椀形からほぼ平らな皿状に開くが、縁は内屈する。直径 1-2.5 mm.。子実層面は平滑、淡黄色あるいはレモン色、時にやや橙色を帯びる。 外面は白っぽく、毛に覆われる。毛は縁近くではほとんど白色だが下面から基部にかけては淡褐色を帯びる。柄は短く、淡褐色の毛に覆われる。-- 子嚢は円筒形、上端はやや円錐状、僅かに肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変して小さい点状に見える。基部にかぎ形構造は見られない。8胞子を束状に生じる。97-126 × 8.3-11.2 μm. -- 側糸は直線的太針状で先端はあまり尖らず、最大径 3 μm. 程度、内容はほぼ一様で無色、基部付近に隔壁があり、子実層より 10-16 μm. 程度突出する。-- 子嚢胞子は糸状、緩やかに曲がって弓状やS字状、末端はやや尖り、無色、薄壁、平滑、まばらに微小な泡状物を含む。 初めは明瞭な隔壁を認めにくいが、後に隔壁を生じ、最大で7隔壁となるようである。54-68 × 1.8-2.5 μm.(射出された胞子は曲がっていて全長の測定が難しいので子嚢内での胞子の測定値)-- 托組織髄層は絡み合い菌組織、外被層は矩形菌組織で厚さ 30 μm. 程度。毛は表面の細胞から生じ、薄壁、粗面、隔壁があり先端は丸い。 緩やかに曲がりくねって互いに絡み合い、最大長 140 μm. × 3.3-4.2 μm.。下面から基部近くの毛は淡褐色を帯び、時にやや粗い淡褐色の結晶状の物質をつけるが、時に内容物も淡褐色に見えるものがある。

[コメント]
主に春頃、倒木や地上の朽木に群生する。子嚢胞子の計測値は文献により幅があり、変異の大きい種のようである。 Ekanayaka et al. (2019) には子嚢は "arising from croziers" とされているのが少し気になる。 各種の朽木上に比較的普通に発生するが、稀に生木の樹皮上にも発生する。かんきつ類(ユズ)の幹腐病菌として報告されている。
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Perić and Baral (2014) によって Erioscyphella 属に転属されたので表記学名に修正した。[2023.05.05]

[別図2] 4月28日撮影。

[参考文献]
Ekanayaka et al. (2019): Preliminary classification of Leotiomycetes. (Mycosphere ; 10(1), p. 310-489).
Haines and Dumont (1984): Studies in the Hyaloschypaceae III. the long-spored, lignicolous species of Lachnum. (Mycotaxon ; 19, p. 1-39)
Perić and Baral (2014): Erioscyphella curvispora spec. nov. from Montenegro. (Mycologia Montenegrina ; 17, p. 89-104).
Spooner (1987): Helotiales of Australasia, Geoglossaceae, Orbiliaceae, Sclerotiniaceae, Hyaloscyphaceae. (Bibliotheca mycologica ; 116).
Tochihara and Hosoya (2022): Examination of the generic concept and species boundaries of the genus Erioscyphella (Lachnaceae, Helotiales, Ascomycota) with the proposal of new species and new combinations based on the Japanese materials. (MycoKeys ; 87, p. 1-52).
貞野ほか (1998): Lachnum abnorme によるユズ幹腐病(新称). (日本植物病理学会報 ; 64(4), p. 438. 平成10年度日本植物病理学会大会講演要旨 444).

[初掲載日: 2007.08.01, 最終更新日: 2023.05.05] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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