Erysiphe japonica

Erysiphe japonica

Erysiphe japonica (S. Ito & Hara) C.T. Wei = Typhulochaeta japonica S. Ito & Hara
コナラ裏うどんこ病菌。12月5日撮影。

[特徴]
菌叢は葉の主に裏面に生じ、永存性、白色の薄い綿状になって拡がる。 裂子嚢殻は菌叢中に散生し、扁球形、黒色、直径 160-180 μm.、高さは 80-100 μm. 程度。表面細胞は褐色、厚膜、径 6-15 μm. の多角形細胞からなる。8-10個程度の子嚢を生じる。 付属糸は裂子嚢殻の上部外周に密に生じ、外方やや斜め上に向かって伸び、100本程度あるいはそれ以上、ルーペ下では白い環状に見える。 棍棒状、無色、基部付近の表面はわずかに粗造に見えるが、それ以外は平滑、上半中心部に細いすじ状に泡状の内容物が少量ある以外は一様、 51-67 × 11.5-17 μm.、基部はやや細く径 6.5-7.2 μm.。成熟後は先端が破れたようになって壊れ、粘質物が周囲に拡がる。-- 子嚢は卵形ないし便腹形、短柄があり、厚膜、74-97 × 42-48 μm.、8個の子嚢胞子を生じるものが多い。-- 子嚢胞子は俵形ないし楕円形、薄壁、淡黄色、内容物は細かい泡状、27-32.8 × 14.2-19.4 μm.

[コメント]
秋、コナラ (Quercus serrata) の葉に発生する。裏面に白い菌叢が発達した落葉はよく目立つ。 子嚢殻は棍棒形で膠質性の特徴的な付属糸を持ち、この種を基準種として Typhulochaeta 属が記載されたが、最近の分子系統解析に基づいて Erysiphe 属に統合されたために、 Wei (1942) による Erysiphe 属との組み合わせが復活した。ミズナラに発生するものは変種 E. japonica var. cruspulae Meeboon & S. Takam. とされている。 成熟した子嚢殻は菌叢から脱落し、周囲の落葉等に付着する。上面を基質に向けた逆立ち状態で付着しているように見えるが詳細は確認できていない。 糊状に溶けた付属糸は乾燥後には一様な薄膜状になって拡がり、子嚢殻を葉面に固着させる。無性世代はまだ発見されていない。

[参考文献]
Ito (1915): On Typhulochaeta, a new genus of Erysiphaceae. (Botanical magazine, Tokyo ; 29, p. 15-22).
Wei (1942): Notes on Chinese fungi. X. Erysiphaceae of western Szechuan. (Nanking journal ; 11, p. 103-116).
大谷 (1988): 日本菌類誌. 第3巻、子のう菌類. 第2号、ホネタケ目・ユーロチウム目・ハチノスカビ目・ミクロアスクス目・オフィオストマキン目・ツチダンゴキン目・ウドンコキン目.
高松 (2012): 2012年に発行される新モノグラフにおけるうどんこ病菌分類体系改訂の概説. (三重大学大学院生物資源学研究科紀要 ; 38, p. 1-73).

[初掲載日: 2020.12.18] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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