Glutinoglossum sp. no.1

Glutinoglussum sp. no.1

Glutinoglossum sp. no.1.
ナナフシテングノハナヤスリ。6月28日撮影。

[特徴]
子実体は細棍棒形や円筒形、平滑で全体黒褐色ないしほとんど黒色、肉質は軟らかく、全体に粘性があり、湿時には著しい。高さ 2-4 cm.。 上半部(全長の 1/2 - 1/3)に子実層があり、柄との境界はやや不明瞭。子実部はやや太まり、時にやや扁平、径 4 mm. 程度までになる。柄は同色あるいはやや淡色。-- 子嚢は細円筒形で薄壁、下半はやや細く伸び、先端は肥厚して頂孔はメルツァー試薬で青変する。8胞子をほぼ二段に生じる。200-270 × 13.8-18.2 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり、径 2.0-2.8 μm.、先端付近は淡褐色、先端は棍棒状あるいは球状に膨らんで 9 μm. 程度までになる。先端付近で緩やかに屈曲する。-- 子嚢胞子は円筒形、平滑、初めはほとんど無色、のち褐色になる。わずかに弓型に曲がるものが多い。両端は丸く、末端側はやや細まる。 ほぼ等間隔に7隔壁を生じるが、3隔壁の胞子も見られる。66-90 × 4.5-5.8 μm. -- 柄の表面からは側糸とほぼ同様の菌糸が立ち上がり、厚さ 200 μm. 程度、ほぼ無色のゼラチン層に包まれる。

[コメント]
春から秋にかけて林内地上に単生あるいは散生する。子実体表面は柄の部分も含めて著しく粘性を帯びるので砂粒等が付着している事が多い。 側糸様の細胞が柄にまで拡がり子実体の表面ほぼ全体に粘性がある特徴を基にした Gloeoglossum 属は Geoglossum 属のシノニムとされているが、 Hustad et al. (2013) は、Gloeoglossum 属のタイプ種 Geoglossum difforme を Geoglossum 属に残した上で、 Geoglossum glutinosum をタイプ種として新属 Glutinoglossum を創設している。 Hustad and Miller (2015) では、G. glutinosum の子嚢胞子は主に3隔壁、とされているし、 Fedosova et al. (2018) は、従来 G. glutinosum とされていたものを検討し、多くの Glutinoglossum 属菌を記載している。 それらの記載を読む限り、日本産のナナフシテングノハナヤスリは真正の G. glutinosum ではないように思われる。 京都のコナラを中心とした雑木林に発生するものは側糸先端が膨らむものが多いが、子実体がやや大型で側糸先端がほとんど膨らまないものもあり(画像にあげたものは先端が膨らむもの)、 この側糸先端の形の違いも含めて検討の余地があると思うので、上記採集品に "ナナフシテングノハナヤスリ" の和名をあてて、Glutinoglossum 属の一種、としておく。

[参考文献]
Fedosova et al. (2018): Towards an understanding of the genus Glutinoglossum with emphasis on the Glutinoglossum glutinosum species complex (Geoglossaceae, Ascomycota). (Persoonia ; 41, p. 18-38).
Hustad and Miller (2015): Studies in the genus Glutinoglossum. (Mycologia ; 107(3), p. 647-657).
Hustad et al. (2013): Generic circumscriptions in Geoglossomycetes. (Persoonia ; 31, p. 101-111).
Imai (1941): Geoglossaceae Japoniae. (Journal of the Faculty of Agriculture, Hokkaido Imperial University ; 45(4). p. 155-264).
Spooner (1987): Helotiales of Australasia. (Bibliotheca mycologica ; Bd. 116).

[初掲載: 2004.10.10; 最終更新: 2018.04.20]