Helvella lacunosa

Helvella lacunosa

Helvella lacunosa Afz.
クロノボリリュウ。6月14日撮影。

[特徴]
頭部はやや不規則な鞍状で柄の上部を包む。表面は平滑、濃灰色からほとんど黒色。縁は内側には曲がらず、柄に接した部分は柄に合着する。直径 1-2 cm. 裏面は淡灰色で平滑。肉は薄く脆いが比較的丈夫。柄は淡灰色(基部付近はほとんど白色)、無毛、高さ 4 cm. 程度まで。縦にうね状の隆起がある。-- 子嚢は円筒形、末端は次第に細くなる。8胞子を1列に生じる。200-320 × 15-20 μm. -- 側糸は糸状、径 3 μm. 程度。隔壁があり先端はやや膨らみ 6 μm. 程度になる。内容物はほぼ無色。-- 子嚢胞子は広楕円形、薄壁、平滑。15.5-21.0 × 10-13 μm.、中央に大きな油球を一個含む。-- 托組織髄層はやや密で無色の絡み合い菌組織、外被層は数層の縦長の楕円形細胞で最外層の細胞の先端は棍棒形や電球形に膨らみ、径 7-20 μm. になる。

[コメント]
晩春から秋にかけて林内地上に単生あるいは少数が群生し、比較的普通に発生する。 外国の図鑑類に図示されているものにはかなり大型のものもあって京都付近で見られるものと見た目がかなり違っている。 変異幅の大きい種とされるが大小の2型に大きく分かれるようで、小型の方は Helvella sulcata(コクロノボリリュウ)とされる事もある。 小型のものの頭部は比較的整った鞍形をしているが、大型のものの頭部はかなり不規則な凹凸があるようだ。 大きさ以外に柄部の構造に違いがあるとされ、小型の方の柄の断面は不規則な二叉分岐状で筒状にはならないが、 大型の方の柄は中空の筒状でその横断面は網状になるという(下図参照)。 これがどの程度安定した性質なのかはわからないが、少なくとも京都付近で見られるのは子実体の小型な sulcata タイプである。 日本の図鑑類ではこの小型タイプが図示されている事が多いようだが、 「信州のキノコ」(信濃毎日新聞社, 1994)にはクロノボリリュウとは別に「内部は広い空洞」の種が Helvella lacunosa = ヤマネノボリリュウタケ(仮称)として挙げられている。
Helvella lacunosaHelvella lacunosa
左図:柄の横断面。右図:H. sulcata と H. lacunosa の比較(Benedix, 1972 より引用)。

[参考文献]
Abbott and Currah (1997): The Helvellaceae: systematic revision and occurrence in northern and northwestern North Americ. (Mycotaxon ; 62, p. 1-125).
Benedix (1972): Art und Gattungsgrenzen bei höheren Discomyceten IV. (Die Kulturpflanze ; 19, p. 163-183).

[最終更新: 2009.07.21]