Hymenoscyphus immutabilis

Hymenoscyphus immutabilis

Hymenoscyphus immutabilis (Fuckel) Dennis
オチバシロビョウタケ。11月19日撮影。

[特徴]
落葉上、主に葉脈に沿って散生ないしやや群生する。 子嚢盤はやや肉厚の皿状ないし倒円錐形で時に子実層面は凸型になり径 1-3 mm.、柄は太くて短く、時にほとんど座生状。 全体が乳白色、後には僅かにベージュ色を帯びるものもある。縁は全縁、外面もほぼ平滑で同色。-- 子嚢は円筒形、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変するが時に不明瞭。基部にはかぎ型構造がある。8胞子を一列に生じるが後には2列になって先に固まる。74-105 × 7.4-8.0 μm. -- 側糸は糸状、基部付近に隔壁があり、ほぼ上下同幅、径 2.5 μm. 程度、上半には細かい無色泡状の内容物がある。-- 子嚢胞子は楕円形あるいはやや紡錘状長卵形で時にわずかに左右不対称、無色、薄壁、平滑、顕著な内容物は見られず、微小な泡状の内容物が僅かにある。9.7-11.8 × 3.2-3.7 μm. -- 托組織髄層は無色薄壁で径 6 μm. 程度までの隔壁部の括れる菌糸からなる絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 60 μm. 程度まで、丸みを帯びた径 12 μm. 程度までの矩形状の細胞からなる。 柄の基部付近の表面からは先端のまるい隔壁のある短い無色の菌糸がまばらに立ち上がる。

[コメント]
秋頃、広葉樹の落葉に生じる。画像はエノキ (Celtis sinensis) 落葉に発生したもの。アベマキ、クヌギ、コナラ、ケヤキ、シデ類等の落葉にも発生する。 広葉樹落葉生、子嚢盤が比較的大型で白色、柄が短くほぼ座生状、肉厚で比較的軟らかい等の特徴を持つものには、 特に常緑カシ類の落葉に発生し子嚢胞子がやや小型のものや、子嚢胞子が大型で2油球の目立つもの等、近似の別種かと思われるものがある。 文献上の記述も特徴にばらつきが多いように思う。 Fungi of Switzerland. v.1. Ascomycetes (Breitenbach and Kränzlin, c1984) で図示されているもの (species no.187) は明らかに別種で Allophylaria nervicola (Velen.) Baral とされる。 当初、ニセビョウタケ属の不明菌 (Hymenoscyphus sp. no.6) として掲載していたものだが、Hosoya et al. (2012) の記述に良く合致すると思うものに H. immutabilis の学名を当てておく。

[別図2] 10月29日撮影。おそらくケヤキ (Zelkova serrata) の落葉。全体がぼってりとしていて Hymenoscyphus 属としては少し異質な感じがする。

[参考文献]
Hosoya et al. (2012): Enumeration of remarkable Japanese discomycetes (6): Notes on two inoperculate discomycetes new to Japan and one operculate discomycete. (Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B ; 38(4), p. 139-146).
Lizoň (1992): The genus Hymenoscyphus (Helotiales) in Slovakia, Czechoslovakia. (Mycotaxon ; 45. p. 1-59).

[初掲載日: 2006.02.21, 最終更新日: 2024.02.06] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
All rights reserved. Copyrighted by Masanori Kutsuna, 2024.