Hymenoscyphus varicosporoides

Hymenoscyphus varicosporoides

Hymenoscyphus varicosporoides Tubaki
ヒメノスキフス ヴァリコスポロイデス。4月23日撮影。

[特徴]
子実体は散生あるいは少数が群生する。子嚢盤はビョウ形、子実層面はやや凸形になり乳白色、古くなると若干赤褐色を帯びる事がある。直径 1.5-3 mm. 程度。 縁は全縁、外面も乳白色で平滑、柄は直径 1mm. 程度で高さ 1-3 mm. 程度だが時に 5 mm. までになる。肉質は比較的柔らかいがゼラチン質ではない。-- 子嚢は円筒形、8胞子をほぼ2列に生じる。先端は肥厚し頂孔はメルツァー液で青変し2個の点状に見える。90-108 × 10.6-12.0 μm. -- 側糸は糸状。径 2.5-3.0 μm. で隔壁があり、ほぼ上下同幅、内容物は無色。-- 子嚢胞子は長卵形ないし長楕円形でやや左右不対称。無色薄壁。成熟胞子はほぼ中央に隔壁があり2細胞、隔壁部は括れず、細かな泡状内容物が少量ある。11.5-19.5 × 4.8-6.0 μm. -- 托髄層は絡み合い菌組織からなり、外皮層との境界付近ではほぼ平行に走る。外皮層は厚さ50-80 μm.、数層の無色薄壁の多角形ないしやや丸みを帯びた細胞からなる。-- 寒天培地上に射出された子嚢胞子は容易に発芽し、菌糸は薄く広がってわずかに灰色を帯びる。 培地上でも分生子を生じるが、生育した培地を切り取り水に浸すと大量の分生子を生じる。-- 分生子柄は径 2.5-3.5 μm. 程度で短く立ち上がり、分枝せずに分生子を頂生する。分生子は無色、緩く湾曲した主軸と2(稀に3)本のほぼ直線状の側枝からなる。 側枝は普通は同方向に延びるので、分生子全体では横棒の長い π 型に見えるものが多い(側枝は主軸に対して互いに90度ほど立体的にずれている様である)。 主軸は 370-540 × 6.5-9.2 μm.、側枝もほぼ同幅で長さ 80-180 μm.、共に隔壁があり先端は丸い。 側枝は主軸の中央付近から互いにやや離れて生じ、側枝の主軸との分岐部は明瞭に括れる。

[コメント]
流水脇の濡れた朽木や落枝上に比較的普通に発生する。春から初夏頃に見る事が多い。 ずっとこれが Hymenoscyphus varicosporoides だろうと思っていたが分生子を確認していなかった。 今回、数か所で採集した複数の子実体から子嚢胞子を発芽させ、分生子を確認することができたので間違いないだろう。 (但し Tubaki (1966) の記載と比べると側枝の再分枝は観察できず、隔壁は図示されたよりも多く、その間隔が狭い。) このアナモルフを Tubaki (1966) は Varicosporium-type としているが、Sivichai ら (2003) は Tricladium としている。 子実体は環境によって柄の長さなど肉眼的に少し異なる様に見えるものがあるが、少なくとも京都付近の水辺の朽木上に発生する白色小型の Hymenoscyphus 属菌は同様の分生子を生じるので同一種とみていいと思う。

[別図2] 4月13日撮影。

[参考文献]
Sivichai, Jones and Hywel-Jones (2003): Lignicolous freshwater Ascomycota from Thailand. Hymenoscyphus varicosporoides and its Tricladium anamorph. (Mycologia ; 95(2), p. 340-346).
Tubaki (1966): An undescribed species of Hymenoscyphus, a perfect stage of Varicosporium. (Trans. Br. mycol. Soc. ; 49(2), p. 345-349).

[初掲載日: 2005.05.23, 最終更新日: 2013.04.30]