Incrucipulum longispineum

Incrucipulum longispineum

Incrucipulum longispineum (Hosoya & Issh. Tanaka) Sasagawa & Hosoya = Lachnum longispineum Hosoya & Issh. Tanaka
ネジキヒナノチャワンタケ。9月13日撮影。

[特徴]
子嚢盤はやや群生する。半球形から浅い椀状に開き、ワイングラス形になる。直径 0.3-0.4 mm. 程度。 子実層面は白色あるいは淡クリーム色。外面は白色、長い無色のガラス様の毛に覆われ、特に縁部付近からは長い毛がまつげ状に伸びる。柄は細く高さ 0.3 mm. 程度までになり同様の毛に覆われる。-- 子嚢は長棍棒形、8胞子を2列に生じる。頂孔はメルツァー試薬に呈色しないが、わずかに青変し不明瞭な小さい点状に見える場合もある。54-66 × 5.6-6.3 μm. -- 側糸は直線的な糸状あるいは太針状、隔壁は認めにくい。径 1.5 μm. 程度、先端は子実層より突出せず、全体同幅あるいは先端がやや細くなる物が多い。-- 子嚢胞子は長紡錘形、無色、やや左右不対称、10.8-14.2 × 2.1-2.8 μm.、一列に少数の油球を含む。-- 托髄層は絡み合い菌組織、外皮層は矩形菌組織で、やや厚膜な無色の細胞からなる。-- 外面の毛は表面細胞より生じ、直線状、無色、厚膜、比較的多くの薄い隔壁がある。表面は細かな顆粒状。先端は丸く、無色あるいはわずかに黄色く見える結晶状物質が附着する。 300-500 × 5.7-11.5 μ.。柄表面の毛は長さは 100 μm. 程度までで先端の結晶状物質は見られないことが多い。

[コメント]
夏から秋頃、ネジキ (Lyonia ovalifolia var. elliptica) の落葉上に特異的に発生し、比較的普通種。乾燥状態では少し発見しづらいが、ネジキの落葉を湿室に入れておくと発生する事もある。 最初は細矢・大谷 (1995) によって "Dasyscyphus virtenbergensis" と [種形容語は virtembergensis が正しい。現在は Incrucipulum virtembergense (Matheis) Baral とされる] 同定、発表されたもので、 後に新種として記載された。 真正の I. virtembergense が日本に産するという記録は見当たらない。なお、日本産菌類集覧 (勝本, 2010) では、Lachnum longispineum は nom. inval.(非正式名)とされていて、 Mycobank でも Name status = Invalid となっている。命名規約に精通しているわけではなく、正式発表とされない根拠がよくわからない。わかる方は教えてほしい。
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Hosoya et al. (2010) で Incrucipulum 属に移されているので、修正した。[2021.07.30 追記]

[別図2] 11月14日撮影。

[参考文献]
Hosoya et al. (2010): Molecular phylogenetic studies of Lachnum and its allies based on the Japanese material. (Mycoscience ; 51, p. 170-181).
Tanaka and Hosoya (2001): Hyaloscyphaceae in Japan (4): new records of the genus Lachnum. (Mycoscience ; 42, p. 597-609).
細矢・大谷 (1995): ガラス様の毛を有する日本産ヒアロスキファ科菌類. (日本菌学会第39回大会講演要旨集 ; p. 75).

[初掲載日: 2008.10.20, 最終更新日: 2021.07.30] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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