Lachnellula sp. no.1

Lachnellula sp. no.1

Lachnellula sp. no.1
ヒナノチャワンタケモドキ属菌。10月28日撮影。

[特徴]
枯枝樹皮上に単生あるいは少数が群生する。 子嚢盤は椀型からほとんど平皿状に開き、径 2.5 mm. までになる。子実層面は平滑、やまぶき色、外面は白色の毛に覆われる。柄は短く、白色毛状。-- 子嚢は円筒形、先端は丸く、僅かに肥厚し、頂孔は不明瞭でメルツァー試薬に呈色しない。基部にはかぎ形構造がある。8胞子をほぼ一列に生じる。86-103 × 8.5-10 μm. -- 側糸は糸状、径 1-1.5 μm.、先端は次第に膨らんで 2.5 μm. 程度までになる。黄色の顆粒状の内容物がある。-- 子嚢胞子は楕円形ないしやや紡錘形、無色、薄壁、平滑、2個の不明瞭な内容物がある。12-14.4 × 5.7-7.5 μm. -- 托組織髄層は径 2.5 μm. 程度の無色薄壁の菌糸からなる絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 40-50 μm.、無色でやや厚膜、径 5-8 μm. の丸みを帯びた多角形細胞からなる。 外面の毛は表面細胞から生じ、緩やかに曲がりくねって絡み合い、無色、やや厚膜、隔壁があり、表面は顆粒状粗面、径 4-4.8 μm.、長さ 120 μm. 以上になり、先端は丸い。

[コメント]
モミ (Abies firma) の落枝に発生したもの。Lachnellula 属菌は針葉樹に癌腫病を起こすものが多い。 邦産でモミ属から記録がある同属菌で特徴(外面の毛が白色、子嚢はメルツァー陰性、子嚢胞子が楕円形で 10 μm. 以上など)が近いものに Lachnellula fuckelii (Bresadola) Dharne があるが、子嚢胞子がやや紡錘状に尖る点が異なるように思う。 プレパラート中には楕円形、無色、薄壁で 3.2-3.6 × 2.4-2.8 μm. の分生子と思われるものが観察できた。 他の菌のコンタミなのか、この菌のアナモルフなのか確認できなかったが、長楕円形の L. fuckelii の分生子とは明らかに異なる。

[参考文献]
Baral (2008): Dichotomous key to Lachnellula (worldwide) [unpublished].
Dharne (1965): Taxonomic investigations on the discomycetous genus Lachnellula Karst. (Phytopathologische Zeitschrift ; 53(2), p. 101-144).
Oguchi (1981): Studies on the species of Lachnellula in Hokkaido: their morphology, physiology and pathogenicity. (Bulletin of the Hokkaido Forest Experient Station ; 19, p. 187-246).

[最終更新日: 2023.09.09] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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