Lamprospora sp. no.1

Lamprospora sp. no.1

Lamprospora sp. no.1
ランプロスポラ属菌。12月10日撮影。

[特徴]
コケ(蘚類)の生えた地上に散生する。 子嚢盤は肉厚の皿状ないしクッション形、直径 1-2.5 mm.、子実層面は橙色ないし赤橙色でやや粒状にざらついて見える。 縁は薄い膜状で幅広い三角形の裂片となって反り返り、半透明淡橙色ないしほとんど無色。 時に裂片がほとんど目立たない子実体もあり、その場合は縁は僅かに立ち上がった襟状になる。 外面はほぼ平滑、淡橙色。柄は無く、基質にやや広く固着する。肉質は柔らかい。-- 子嚢は円筒形、有蓋、基部は急に細くなり二叉状になる。メルツァー試薬に呈色しない。8胞子をほぼ一列に生じる。230-290-(335) × 18.5-22.0-(34) μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり下半で分岐し、径 3.5-5.2 μm.、先端は次第に膨らんで径 6.8-8.8 μm. になる。全体に細かい橙色の顆粒状内容物がある。-- 子嚢胞子は球形、無色、薄壁、径 16.5-19.4 μm.、内容物は径 11-13 μm. の油球が一個、やや偏在する。 表面はコットンブルーに染まる多角形の網目状突起におおわれる。網目は3-7角形、完全で、途切れているものは見当たらない。 網の各辺は直線的、幅 0.5 μm. 程度、高さ 0.8 μm. 程度まで、一個の子嚢胞子の各網目の大きさはややばらつきが大きく、径 2.0-4.3 μm.、直径上に8個程度まで。-- 托組織髄層は 28-50 × 17-24 μm. の無色の丸みを帯びた多角形細胞からなり、外皮層との境界は不明瞭。外皮層はやや矩形状、径 8-10 μm. 程度。 縁の裂片は鎖状に繋がった無色薄壁の細胞が束状になっており、各細胞は長円形ないし棍棒形、34-66 × 11-20 μm.、全体の長さは 200-300 μm. になる。

[コメント]
コケの生えた砂質の地上に散生していた物。主に真冬に発生し、晩秋から早春にかけて見られる。 コケに関してはほとんど知識が無く同定できていないが、近辺には複数種(少なくとも2種)が混生していた。 群落中心のコケが密生した所よりも周辺部のまばらで地面が露出している所に多く、 コケの仮根に付着しているものもあるし、少し離れた砂粒上に発生しているものもある。 ランプロスポラ属はヨーロッパや北米を中心に多くの種がコケ生菌として報告されていて、 胞子表面の模様や寄主などが同定のポイントだが、子嚢胞子が網目状突起を持つ種は多く、いくつかの文献を参照しても良くわからない。 寄主のコケの種類がわかればある程度絞り込めるかもしれない。Lamprospora miniata De Not. が近いかなと思う。 ランプロスポラ属菌の日本からの報告を見付けられなかった。

[別図1] 赤みの強い子実体。1月3日撮影。

[参考文献]
Benkert (1987): Beiträge zur Taxonomie der Gattung Lamprospora (Pezizales). (Zeitschrift für Mykologie ; Bd. 53(2), p. 195-271).
Eckstein and Eckstein (2009): Bryoparasitische Pezizales (Ascomycetes) der Gattungen Lamprospora, Octospora und Neottiella im Alten Botanischen Garten von Göttingen (Deutschland, Niedersachsen). (Herzogia ; 22, p. 213-228)
Wang and Kimbrough (1992): Monographic studies of North American species of Octospora previously ascribed to Lamprospora (Pezizales, Ascomycetes). (National Museum of Natural Science special publication ; no. 4).

[初掲載日: 2017.01.20]