Leotia lubrica

Leotia lubrica

Leotia lubrica (Scop.: Fr.) Pers.
ズキンタケ。8月20日撮影。

[特徴]
子実体は有柄、子実層のある頭部と柄よりなる。全体軟らかいゼラチン質で高さ 2-5 cm.、 頭部は半球形ないし拳状等で径 12 mm. 程度までになる。表面はほとんど平滑で黄色、飴色、オリーブ色など変異が多い。 柄は円柱状で中実、黄色から橙色等、表面には細かな黄褐色粒状の鱗片が散在するが、時にはほとんど鱗片が無く、表面が平滑な子実体もある。 径 3-7 mm. 程度、扁平な場合は 1 cm. を超えることもある。 雨上がりなどには、柄全体が無色で透明なゼラチン質に覆われたようになりやや粘性があるが、乾燥時には目立たない。-- 子嚢は棍棒形、先端はやや肥厚しメルツァー試薬に呈色しない。8胞子を初め一列に生じるが、後にはほぼ2列になって先に固まる。140-180 × 10-12 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり基部近くで分岐するものが多い。径 2 μm. 程度。先端は膨らんで 3.0-4.0 μm. までになり、 ほとんど無色もしくはわずかに黄褐色を帯びる。先端付近は淡黄褐色の不定形ヤニ状物質に薄く覆われる。-- 子嚢胞子は長紡錘形、無色平滑、両端は丸く、やや左右不対称または弓形になり、内容物は4個(時に6個)の一列の油球が目立つ。15.0-24.5 × 4.8-6.0 μm. -- 柄組織髄層はゼラチン質に包まれた絡み合い菌糸組織。薄壁、無色で隔壁があり分岐の少ない径 2.0-3.5 μm. の菌糸よりなる。 外皮層内側は厚さ 120-160 μm.、やや黄色を帯びた径 4-6 μm. の平行な菌糸からなる。 最外層はゼラチン質に包まれた絡み合い菌糸組織からなる。湿時は吸水して厚さ 1 mm. 近くにまでなる。 菌糸は薄壁、無色で隔壁があり径 2.0-3.5 μm.、時にこぶ状に膨れ、分岐、吻合がある。 先端は時に棍棒状になり、径 7-8 μm. まで膨らんで、黄褐色の物質に覆われて互いに合着し房状になる。

[コメント]
秋に地上に発生し、群生することも多い。 頭部(子実層)の色などの肉眼的な違いによって多くの品種(あるいは独立種ともされる)が記載されているが、ズキンタケとしてまとめておく。 ズキンタケの子嚢胞子は成熟後に隔壁を生じるとする文献が多い。図鑑類からいくつか例を挙げると、
・原色日本新菌類図鑑(II): "初め1室のち3~7隔膜を生じ"
・Breitenbach and Kränzlin, Fungi of Switzerland: "with 3-5 septa"
・Dennis, British Ascomycetes: "5 or 7-septate"
・Beug et al., Ascomycete fungi of North America: "multiseptate at maturity"
などであるが新鮮な子嚢胞子には隔壁は認められない。 自然状態で老熟してひからびた子実体や、湿室に数日保った子実体から採った子嚢胞子でも隔壁は観察できない。 素寒天上に射出させた子嚢胞子は、一ヶ月ほど経っても発芽しないが隔壁も生じない。 隔壁を自分で確認しようと様々な状態の相当数の子実体を調べたけれども隔壁のある子嚢胞子を見る事ができていない。 ズキンタケの子嚢胞子は仮に最終的には隔壁を生じるとしても、それを確認する事は大変難しいと言わざるを得ず、 上記文献の著者がどのような方法で子嚢胞子の隔壁を確認したのか疑問が残る。

[別図2] 頭部が黄色のもの。9月8日撮影。

[参考文献]
今関, 本郷(1989): 原色日本新菌類図鑑(II)

[最終更新日: 2014.09.22]