Lophium sp. no.1

Lophium sp. no.1

Lophium sp. no.1
ロフィウム属菌。12月4日撮影。

[特徴]
子嚢殻は材上に散生する。普通は二枚貝を立てたような形で、長さ 600-700 μm.、高さ 370-450 μm.、上から見ると紡錘形、時に分岐してトリケトラ形 (Triquetra) になる。 外面は平滑、上半は黒色でややつやがあり、下半から基部にかけては灰褐色を帯び、微粉状に見える。 上面に全長に亘ってスリット状の割れ目があるが、成熟しても裂開しない。-- 子嚢は長円筒形、厚膜、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を束状に生じる。170-195 × 7-8 μm. -- 側糸は認められない。-- 子嚢胞子は糸状、淡黄褐色、平滑、両端はやや細まる。子嚢内では直線的、射出された子嚢胞子は緩やかに屈曲する。 まばらに油球を含み、後に 8-10 μm. 程度のほぼ等間隔に隔壁を生じる。隔壁部は括れない。137-170 × 1.6-2.0 μm.

[コメント]
ヒノキと思われる腐朽した伐採木の材上に発生したもの。二枚貝を立てたような独特な形をしている。 国内では高橋 (1979) が汎布種である L. mytilinum (Pers.:Fr.) Fr. を報告していて、特徴がよく似ている。 ただ、L. mytilinum は外面には横筋があり全体がつやのある黒色を呈する菌のようで、下半が灰褐色微粉状になる私の採集品とは異なる。 この微粉状の部分の詳細を確認できず、これがどの程度安定した特徴なのかわからない。L. mytilinum あるいはその近似種、としておく。

[別図2] 側面。同日撮影。

[参考文献]
Boehm et al. (2009): A molecular phylogenetic reappraisal of the Hysteriaceae, Mytilinidiaceae and Gloniaceae (Pleosporomycetidae, Dothideomycetes) with keys to world species. (Studies in mycology ; 64, p. 49-83).
高橋 (1979): 北海道中央部における針葉樹の菌類相と病害に関する研究 -主として子のう菌類、不完全菌類及びさび菌類について-. (Bull. Tokyo Univ. For. ; 69, p. 1-143).

[初掲載日: 2016.12.21]