Lophodermium pinastri

Lophodermium pinastri
Lophodermium pinastri
Lophodermium pinastri

Lophodermium pinastri (Schrad.) Chevall.
マツの葉ふるい病菌。5月16日撮影。

[特徴]
マツ類の落葉に発生する。普通は針葉の凸面側に発生するが、凹面側にも発生する事がある。 殻皮は中心線付近以外は表皮細胞下に生じ、黒色、楕円形ないし広紡錘形、長径 0.7-1.2 mm.、成熟すると中央がスリット状に開口し、灰色の子実層を表す。 開口部の縁は乳白色ないし淡灰色に見える。落葉には細く明瞭で黒褐色の帯線が多数形成される。-- 子嚢は円筒形、薄壁、上部は円錐状で先端は平らになる。メルツァー試薬で呈色しない。8胞子を束状に生じる。165-172 × 13.4-14.3 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり、無色、径 2.0 μm. 程度、先端は僅かに膨らんで 3.0 μm. までになり少し折れ曲がったようになるものが多い。 -- 子嚢胞子は糸状、単細胞、無色。先端は丸く、末端はやや細くなり、全体に細かい油球をまばらに含む。80-106 × 2.0-2.3. μm.。 射出された子嚢胞子は全体がゼラチン状被膜に包まれ、その厚さは 2-2.5 μm. 程度。-- 殻皮の裂開部には無色の舌状細胞層がある。無色薄壁で隔壁のある先端の丸い細胞が柵状に並び、最大の厚さは 20 μm. 程度。 子嚢盤底部中央付近には寄主の表皮細胞が 5-7 個並ぶ。-- 子嚢殻付近に微小な分生子殻が散在する。組織下に形成され、側方が開口するように見える。分生子は 5.8-6.3 × 1.5-1.8 μm.

[コメント]
クロマツ (Pinus thunbergii) の落葉に生じていた物で、マツ類に発生する Lophodermium 属の中では最普通種。これが L. pinastri だろうと思う。 開口部の縁にある舌状細胞 (lip) は時に赤みを帯びるとする文献が多いが、そのような子実体を観察できなかったので若干の疑問は残っている。

[参考文献]
作山 (1993): 日本産マツ葉ふるい病の病原菌の形態. (Transactions of the Mycological Society of Japan ; 34, p. 433-447).
Minter (1981): Lophodermium on pines. (Mycological papers ; 147, p. 1-54 + plates).

[初掲載日: 2016.07.01]