Microstoma floccosum

Microstoma floccosum

Microstoma floccosum (Schw.) Raitviir.
シロキツネノサカズキ。6月10日撮影。

[特徴]
落枝に少数が群生する。子嚢盤は有柄、壷状球形から倒円錐形に開き、直径 3-8 mm.、子実層面は赤色ないし淡紅色、後やや退色する。 縁は全縁、外面は白色だが、子実層の色が透けて淡いピンク色に見える。全体が白色の毛に覆われ、縁部の毛はやや長い。肉厚は薄いが、比較的丈夫。 柄は中心生、白色中実、全体が白色の毛に覆われ、径 1-2 mm.、長い子実体では長さ 2 cm. を超える事がある。落枝上には淡褐色の菌糸が剛毛状ないし古綿状に伸びる。-- 子嚢は円筒形、やや厚膜、有蓋で蓋は先端からやや外れて付く。メルツァー試薬で呈色しない。8胞子を一列に生じる。末端は急に括れて虫垂状に延びる。 257-330 × 13.8-17.0 μm.(虫垂状の部分を除く。虫垂状部は径 3 μm. 程度、不規則に曲がりくねり、時に分岐し、全長 22-60 μm.)-- 側糸は糸状、径 2.0-2.5 μm.、隔壁があり良く分岐し時に融合する。淡赤ないし淡橙色の内容物がある。-- 子嚢胞子は楕円形、時にわずかに左右不対称、ほとんど無色、平滑、内容物は細かい泡状、側面に無色のゼラチン状の付属物がある。18.5-31.5 × 10.0-11.8 μm. 大きさのばらつきが大きく、一般に子嚢の基部の方の子嚢胞子が大型になる傾向がある。-- 托組織髄層はほぼ平行な無色薄壁の菌糸よりなり、径 3-10 μm.、隔壁部はやや括れる。 外皮層は厚さ 30-60 μm. の多角菌糸組織で、無色でやや厚膜の径 8-15 μm. の細胞よりなる。顕著にゼラチン化している部分は認められない。-- 毛は外皮層の内部より生じ、厚膜、無色、隔壁があり、直線状で先端は尖り、基部はやや根状に細まる。基部付近で径 10-23 μm.、長さは 1 mm. 以上になる。-- 落枝表面に広がる菌糸は厚膜で表面は平滑、隔壁がある。緩やかに曲がりくねって絡み合い、分岐はほとんど見られず、先端は丸い。 直径は 8.2-9.2 μm.、先端付近はやや淡色になり直径 4.0-5.8 μm. 程度。

[コメント]
初夏に落枝上に発生する。比較的細い、半ば土に埋もれたような落枝に多い。落枝の種類は特定できていないが、イチイガシ林やシイ林などで採集している。 戦前の京都での報告があるのだが(伊藤, 1943)、秋(10月19日と11月12日)に採集されていて、私の採集時期(5月後半から7月頃)とは異なる。 報告にある採集地(八瀬長谷出)の付近を何回か探索したのだが他の時期も含めて発生を確認できていない。

[別図2] 6月9日撮影。
[別図3] 6月17日撮影。

[参考文献]
伊藤 (1943): シロキツネノサカヅキ(新稱)Plectania floccosa Schw. Seaver に就て. (植物及動物 ; 11, p. 671).
大谷 (1980): 日本産ベニチャワンタケ亜目. (日本菌学会会報 ; 21, p. 149-179).
Kanouse (1948): The genus Plectania and its segregates in North America. (Mycologia ; 40, p. 482-497).

[初掲載日: 2004.06.30, 最終更新日: 2015.07.10]