Pachyella violaceonigra?

Pachyella violaceonigra?

Pachyella violaceonigra (Rehm) Pfister?
 ケシムラサキチャワンタケ?。6月4日撮影。

 [特徴]
 子嚢盤は平たい皿型、直径 2-3 cm. 子実層面は赤褐色で平滑または少し波打つ。縁は全縁で比較的肉厚。
 外面は平滑、褐色を帯びた乳白色でわずかに粘性がある。
 柄は無く、下面のほとんどの部分で基質に固着する。肉は白く、変色性は無い。
 子嚢は円筒形、8胞子を一列に生じる。全体がヨードで薄く青変する。325-400 × 20-26 μm.
 側糸は糸状、隔壁がある。径 3-5 μm. 先端は次第に膨らんで 8-9 μm. までになり、淡褐色の内容物がある。
 子嚢胞子は楕円形、やや厚膜で無色、2油球を含む。表面は細かく低い疣状。20.6-22.9 × 9.4-11.5 μm.
 托髄層は絡み合い菌組織、外被層は無色薄壁の楕円形細胞の層があり、その外側にゼラチン質に覆われた柵状の組織がある。
 楕円形細胞はやや角ばり、37-80 × 17-34 μm.、数層に連なり、最外層の細胞から柵状組織の菌糸が伸びる。
 柵状組織は厚さ 200-250 μm.、隔壁のある径 5.6-10 μm. の菌糸からなり、分岐は見られず先端はわずかに膨らむものもある。

 春にカシ林などの湿った粘土質の地面に発生するが社寺の庭園などにも発生する。
 Pachyella 属は朽木生の種が多いのだが、これは地上生で地面下にも特に目立つ様な植物遺体は見当たらない。
 特徴は Pfister 等の記述に近いのだが写真の個体は子実層面の赤みが強く、Fungi of Switzerland の写真と比べても
 ずいぶん様子が違うので少し疑問が残っている。
 1991 年に日本新産として上記の和名で報告されたが、1982 年に Pachyella barlaeana (P. violaceonigra の異名)が
 高知県で記録されている。(近安和雄: 高知県で採集された高等菌類. 日菌報 ; 23, p. 507)

 [参考文献]
 Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. vol. 1.
 Hosoya, Furuya and Otani (1991): Materials for fungus flora of Japan (44). (Trans. Mycol. Soc. Japan ; 32, p. 351-353)
 Pfister (1973): The psilopezioid fungi IV. The genus Pachyella (Pezizales). (Canadian journal of botany ; 51, p. 2009-2023)