Peziza micropus

Peziza micropus

Peziza micropus Pers.
ペジザ ミクロプス。11月29日撮影。

[特徴]
子実体は腐木上に単生あるいは少数が群生する。椀状から皿状に開き直径 3-8 cm.、子実層面は平滑、黄褐色や明栗褐色など。 縁は小さく内屈し細かな鋸歯状になるものが多い。外面は白っぽく、ほとんど平滑で細かい粉状か糠状になる。 中央で基質に固着しほとんど柄は無い。肉質は脆く厚さ 2 mm. 程度までで変色性はない。-- 子嚢は円筒形、先端には蓋があり周囲はメルツァー試薬で青変する。8胞子を一列に生じる。255-300 × 11.4-14.6 μm. -- 側糸は糸状、無色、隔壁があり径 2.6-3.0 μm.、先端は棍棒状に膨らんで 6 μm. 程度になりまっすぐかわずかに曲がるもののある。-- 子嚢胞子は楕円形、無色でほとんど平滑、あるいは非常に細かい疣状に見える。顕著な内容物は認められない。15.1-16.0 × 8.2-9.2 μm. -- 托組織は顕著な層構造をなす。子実下層は密な絡み合い菌組織。 次に円形菌糸組織の層 [a] がある。球形ないし楕円形の細胞は最大で径 120 μm. になり無色薄壁。球形細胞の間をソーセージ形の菌糸が走る。 次にやや平行に走る径 10 μm. までの菌糸よりなる絡み合い菌組織の層 [b] がある。 次に円形菌糸組織の層 [c] がある。細胞は無色薄壁でやや角ばり縦長なものが多い。細胞の長径は最大 170 μm. に及ぶものがある。 最後が小さな球形細胞が混じる密な絡み合い菌組織の層 [d] で直径 15 μm. まで。表面の細胞は短いミミズ状で絡まって立ち上がりあるいは房状になる。 各層の厚さの比は a:b:c:d = 3:1:2:1 程度。

[コメント]
広葉樹の朽木に発生する。古いシイタケのホダ木にも発生する。 托組織には明瞭な層構造が見られるが、P. micropus の組織は層構造とならないとする図鑑(例えば Dennis)もある。 Donadini や Svrček の記述する特徴とよく一致するのでたぶんこれが Peziza micropus に当たるものだと思うが P. varia - P. micropus - P. repanda - P. cerea 等の一連の菌群を区別できないとする最近の文献もある。 これらが微妙な一群なのは間違いなく、判断に迷うものが良く採れるのも確かだけれど、 ここではとりあえず朽木生、側糸が膨大せず、子実体組織が層構造をなすものに P. micropus の名前を当てておく。

[参考文献]
Dennis (1981): British Ascomycetes. Rev. ed.
Hansen, Læssøe and Pfister (2002): Phylogenetic diversity in the core group of Peziza inferred from ITS sequences and morphology. (Mycological research ; 106(8), p. 879-902)

[初掲載: 2009.04.21]