Peziza sp. no.5

Peziza sp. no.5
チャワンタケ属菌。4月17日撮影。
[特徴]
子実体は単生あるいは散生する。子嚢盤は椀形から皿型に開くが縁はやや内側に巻いていることが多く、
径 2.0-4.5 cm.、子実層面は初めは油を塗ったようなツヤがあり、平滑ないし中央付近はやや皺状、ややオリーブ色を帯びた黄褐色から栗褐色、
後にはツヤが無くなり暗褐色になる。縁は全縁あるいはわずかに鋸歯状、外面はやや淡色、ほとんど平滑あるいはわずかにざらついた顆粒状、基部付近では細かなフケ状になることが多い。
柄は短く、時にほとんど無い。肉質は水っぽいが、顕著な乳液は見られず、変色性もない。--
子嚢は円筒形、先端は有蓋でルゴール試薬で青変し、基部は2叉状になる。8胞子を一列に生じる。260-312 × 13.0-16.8 μm. --
側糸は糸状、基部で分岐し、隔壁があり、先端は丸くほとんど膨らまない。先端付近で径 3.0-3.8 μm. 基部付近で 6-8 μm.、内容物はほとんど無色、先端には黄褐色のヤニ状物質が付着し互いに合着する。--
子嚢胞子は広紡錘形ないし楕円形、初め無色、成熟すると黄褐色、やや厚膜、粗面、油滴は含まないが、不明瞭な2個の顆粒状の塊がある。
表面には短径片面に10個程度の低い疣がある。疣はコットンブルーによく染まり、半球状で径 0.5 μm. 程度。疣を除いて 16.5-18.0 × 8.0-9.5 μm. --
托組織はほぼ一様で、径 80 μm. に達する球形ないし楕円形などの細胞が目立ち、その間隙を径 12 μm. 程度までの絡み合った菌糸が埋めている。
外面近くの組織は径 15-30 μm. 程度のやや褐色を帯びた角ばった細胞からなり、時に房状になる。表面細胞からは時に短い毛状菌糸が立ち上がる。
[コメント]
春から初夏頃に地上に発生する。やや砂質の湿った所に多いようだが、比較的腐朽の進んだ朽木や、風化してコケの生えた花崗岩上などにも生える。
以前は Peziza badiofusca ではないかと思っていたが別種だろう。疣状突起をもつ褐色系のチャワンタケ類は京都附近でも数種以上あり、種名を確定できないものが多い。
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最近、Van Vooren (2020) は Peziza 属を複数の属に分割した。転属処理をされた種はまだそれほど多くない。
この種の子嚢先端部分はルゴール試薬で比較的広く染まり、蓋の縁部はやや濃く青変する。
子嚢胞子は成熟すると褐色を呈するので、Phaeopezia 属に該当する種だろうか。種名がわかるまでは Peziza 属の一種、としておく。[2025.06.15 追記]
[別図2]
4月27日撮影。子実層にツヤがあるものは、子嚢胞子が未熟な場合が多い。
[別図3]
4月11日撮影。子嚢胞子を噴出する頃になると子実層面のツヤは無くなる。
[別図4]
5月20日撮影。かなり老熟した子実体。若い子実体とは肉眼的にはかなり異なる。
[参考文献]
Van Vooren (2020): Reinstatement of old taxa and publication of new genera for naming some lineages of the Pezizaceae (Ascomycota). (Ascomycete.org ; 12(4), p. 179-192).
[最終更新日: 2025.06.15] //
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