Peziza sp. no.8

Peziza sp.

Peziza sp. no.8 (Peziza arvernensis Boud.?)
 古畳に生じた大型のチャワンタケ。5月27日撮影。

 [特徴]
 子実体は椀形だが波状に屈曲して広がり直径 8-12 cm. になる。子実層面は黄褐色で平滑。
 縁はやや鋸歯状になり外面は白っぽい粉状で縁付近はややフケ状になる。柄はほとんど無く、肉は薄く脆い。
 乾燥標本にすると子実層は黒褐色、外面はほとんど白色になる。
 子嚢は円筒形、8胞子を一列に生じる。先端は I+。240-280 × 12.5-14.3 μm.
 側糸は糸状、隔壁があり、径 3.0-3.8 μm. 先端は膨らんで 9.2 μm. までになり、少数の黄褐色の油球を含む。
 子嚢胞子は長楕円形、ほとんど無色。両端に少量の細かい泡状物がある。全体に細かい疣状。
 疣はやや不正形で径 0.5 μm. 以下、高さは 0.2 μm. 程度で短径片面に10個ほど認められる。
 疣の大きさはばらつきがあるが繋がることは無い。疣を除いて 17.0-17.5 × 8.2-8.6 μm.
 組織は中央付近に絡み合い菌組織の層がある以外は円形菌組織からなり、大型の球形細胞が目立つ。
 最外層はミミズ状の曲がりくねった比較的短い細胞が密に絡み合っている。

 かなり腐朽の進んだ畳に Scutellinia 属菌などと共に数個発生していたもの。
 Peziza 属は似た種類が多く判りにくいが P. arvernensis Boud. (モリノチャワンタケ)ではないかと思う。
 原色日本新菌類図鑑には 3-5 cm. で地上生とありちょっと様子が異なるが
 Donadini には 15 cm. に達するとあり、胞子の形状や組織構造もかなり近い。

 [参考文献]
 Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. vol. 1.
 Dennis (1981): British Ascomycetes. Rev. ed.
 Donadini (1979): Le genre Peziza Linne per Saint-Amans (1ère partie). (Documents mycologique ; 9(36). p. 1-42)