Phacidium sp. no.1

Phacidium sp. no.1

Phacidium sp. no.1.
ファキディウム属菌。12月12日撮影。

[特徴]
カシ類の落葉裏面に発生する。子嚢盤は寄主の表皮細胞下に形成され、薄い円盤形、径 1.5 mm. まで。落葉には帯線や漂白箇所は見られない。 成熟すると上面が放射状に裂開して表皮細胞と共に数片の三角形の裂片になって反り返り、子実層が現れる。 子実層面は平滑、肉眼では紫色を帯びた半透明淡褐色に見え(子実層自体は殆んど無色。子実下層の色が透けて見えていると思われる)、反り返った裂片の内側は暗紫褐色。-- 子嚢は棍棒形、薄壁、基部にはかぎ形構造があり、先端は円錐状で頂部はやや平ら、肥厚して頂孔はメルツァー試薬で青変する。 8胞子をほぼ2列に生じる。77-86 × 8.5-9.0 μm. -- 側糸は糸状、ほぼ無色、径 1.5 μm. 程度、先端は子嚢よりやや長く、僅かに膨らんで 2.5 μm. までになり、淡褐色の物質に覆われて合着する。-- 子嚢胞子は長卵形ないし紡錘形状、無色、薄壁、平滑、顕著な内容物は見られない。10.8-14.2 × 3.0-4.0 μm. -- 子実下層は褐色で径 3 μm. までの多角形細胞の層からなり、反り返った部分の内側は黒褐色、径 6 μm. までのやや厚膜で丸みを帯びた多角形の細胞からなる。-- 不完全世代は確認できなかった。

[コメント]
アラカシ (Quercus glauca) 落葉の裏面に群生していたもの。アカガシ (Quercus acuta) の落葉にも発生し、晩秋から初冬にかけて見られる。 最初は Coccomyces 類かと思って採集したが、子嚢や子嚢胞子等の特徴から Phacidium 属の菌だと思う。 Phacidium 属は針葉樹に発生する種が多く、国内からは針葉樹生の種が知られている。 広葉樹生の種ではヒマラヤ地方から Quercus leucotrichophora の葉に発生する Phacidium kumaonense Bose et Müller が記録されている (原記載では種形容語は kumaonensis となっているが、属名 Phacidium は中性なので語尾は kumaonense が正しい)。 この菌は DiCosmo, Nag Raj and Kendrick (1984) によって Pseudophacidium kumaonense (Bose et Müller) DiCosmo, Nag Raj et Kendrick とされているが、 アラカシにも生じるとあり、似た点がある。だが子嚢頂孔が非アミロイドである事など、いくつかの特徴が異なっているので別種だろう。

[参考文献]
Bose and Müller (1964): Central Himalayan fungi. I. (Indian phytopathology ; 17, p. 3-22).
DiCosmo, Nag Raj and Kendrick (1983): Prodromus for a revision of the Phacidiaceae and related anamorphs. (Canadian journal of Botany ; 61, p. 31-44).
DiCosmo, Nag Raj and Kendrick (1984): A revision of the Phacidiaceae and related anamorphs. (Mycotaxon ; 21, p. 1-234).

[初掲載日: 2018.01.12]