Pleurovularia polliniae

Pleurovularia polliniae

Pleurovularia polliniae (Hennings) R. Kirschner & U. Braun
アシボソ裏白かび病菌。6月16日撮影。

[特徴]
葉にやや細長いゴマ状の病斑を多数生じる。病斑は紡錘形ないし楕円形、長径 1.5-3 mm. 程度、表面側は退色して黄色、裏面側は分生子柄を多数生じ、白色粉状ないし綿状。-- 分生子柄は数本が束生し、無色、薄壁、ほとんど平滑あるいは僅かに粗面に見え、径 5-6.5 μm.、長さは 100 μm. あるいはそれ以上に達し、隔壁があり、各細胞の上端に斜め短枝状の突起を伸ばし、先端に分生子を単生する。-- 分生子は倒卵形で末端はへそがあり平ら、無色、薄壁、平滑、12.3-14.3 × 8.2-11.5 μm.、時に先端側に小さなドーム型の無色ゼラチン質様の付着物が見られる。

[コメント]
寄主はアシボソ (Microstegium vimineum) だと思うが、自信がない。 Kirschner et al. (2002) は分生子の大きさを 11-14 × 7-10 μm. とする一方で、Hennings の原記載 (Botanische Jahrbücher für Systematik, Pflanzengeschichte und Pflanzengeographie ; Bd. 37, p. 165. 1905) には 8-13 × 6-7 μm. とあり、少し細めである。
タイプ標本は吉永虎馬(高知県在住の植物学者、1871-1946)の採集品で、そのデータは "Prov. Tosa, Katakasa-mura: auf Blättern von Pollinia imberbis Nees. (T. Yoshinaga n. 25, Juni 1901)" となっていて、 Kirschner et al. (2002) 等、近年の論文でも同様に引用されている。この 「かたかさ」 という地名の存在を(過去においても)確認できない。 Hennings 等欧米の研究者に標本を送付して研究を進めた吉永は、同定された菌類を植物学雑誌に随時報告していて、そこには採集地の漢字表記があるが、この菌の報告は見当たらない。 ただ、「土佐國産菌類第二報」 (植物学雑誌 ; 16, p. 1-7. 1902)には、同年同月に採集され Aecidium mori (Barcl.) P. Henn. と同定された菌の採集地が "土佐郡小高坂村" とある。 小高坂はちょっと難読で 「こだかさか」 ではなく、「こだかさ」 と読み、現在は高知市の学区名として残っている。"Katakasa" は小高坂 (Kodakasa) のことだろう。Hennings によるラベルの誤記ではないかと思う。

[参考文献]
Kirschner et al. (2002): Pleurovularia, a new genus of hyphomycetes proposed for a parasite on leaves of Microstegium sp. (Poaceae). (Mycoscience ; 43, p. 15-20).

[初掲載日: 2023.01.06] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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