Pulvinula sp. no.3

Pulvinula sp. no.3

Pulvinula sp. no.3.
プルヴィヌラ属菌。9月30日撮影。

[特徴]
地上にやや群生する。子嚢盤は肉厚の皿状から平らに開き、さらに子実層面が凸型のクッション形になり、直径 2.5 mm. 程度まで。全体乳白色で古い子実体はやや薄墨色を帯びる。 縁は全縁、外面は平滑で同色、柄は無く基質に広く固着する。ルーペで見ると白色の菌糸が下面基部あたりから伸びているのが見える。 -- 子嚢は円筒形、薄壁、先端は有蓋、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を一列に生じ、基部はさすまた状に二叉する。203-235 × 15.1-17.2 μm. -- 側糸は糸状、下半で分岐し隔壁があり無色。径 1.5 μm. 程度。先端は緩やかに膨らんで 4.0 μm. 程度までになり、釣り針状に曲がる。 -- 子嚢胞子は球形、無色平滑。大きな油球を一つ含む。直径 13.7-14.6 μm.

[コメント]
コナラを主とした雑木林内の地上に発生していたもの。球形胞子、先の曲がる側糸など、Pulvinula 属の特徴を持つが種名はわからない。 Pulvinula 属菌は橙色から赤色系の種が多いが白色の種類もいくつかあり、 白色の種は国内から P. globifera (Berk. & Curt.) Le Gal sensu Rifai が大谷 (1990) によってマルミノシロチャワンタケとして記録されている。 大谷 (1990) は、「白色あるいは黄色を帯びる」 としているが、黄色味を帯びる子実体は観察できなかった。 [別図2] に示した子実体は肉眼的特徴では区別できず、顕微鏡的特徴も側糸先端が曲がらない点以外はほぼ同じである。 Pfister (1976) は、P. globifera の側糸は変異に富む、と記しているので、決定的な区別点ではないのかも知れない。 P. globifera の子嚢胞子は Nagao (1996) では "10-13.8 μm."、大谷 (1990) では "10.5-12.8 μm."、 Rifai (1968)では "10-13.8 μm." とあり、 京都産の菌に比べて小型なので、プルヴィヌラ属の一種、としておく。 中国から記載された白色の Pulvinula 属菌、P. minor Liu は、子嚢胞子の大きさが 13-15.6 μm. と近く、似ていると思う。

[別図2] 9月2日撮影。カシ林内の地上に発生していたもの。 子嚢は 185-200 × 14-16 μm.、基部は二叉状、8胞子を一列に生じる。-- 側糸は糸状、隔壁があり、先端はマッチ棒状に膨らんで 3.5 μm. までになるがほとんど屈曲しない。-- 子嚢胞子は球形、無色平滑、未熟な子嚢胞子には複数の油球が含まれるが、後に大きな油球が一つになり、やや偏在する。 13.1-14.6 μm. -- 托組織髄層はやや密な絡み合い菌糸組織、外皮層は厚さ 60-100 μm. 程度、径 15 μm. 程度までの無色で薄壁の角ばった亜球形細胞からなる。 縁部では電球形ないし長棍棒形になり 11-30 × 4.2-6.0 μm.

[参考文献]
Nagao (1996): Miscellaneous notes on Discomycetes of the Bonin Islands, Ani-jima Island. (Mycoscience ; 37, p. 357-365).
Pfister (1976): A synopsis of the genus Pulvinula. (Occasional papers of the Farlow Herbarium of cryptogamic botany ; 9, p. 1-19).
Rifai (1968): The Australasian Pezizales in the herbarium of the Royal Botanic Gardens Kew. (Verhandlungen der Koninklijke Nederlandse Akademie van Wetenschappen. Afd. Natuurkunde ; 56(3). 295 p.).
大谷 (1990): 日本産盤菌綱菌類雑記. (菌蕈研究所研究報告 ; 28, p. 251-265).
刘 (1991): 我国垫盘菌属两新种. (真菌学报 ; 10(3), p. 185-189).

[最終更新日: 2018.04.02]