Rhytidhysteron rufulum

Rhytidhysteron rufulum

Rhytidhysteron rufulum (Spreng.) Speg.
リティドヒステロン ルフルム。3月31日撮影。

[特徴]
子実体は朽木の樹皮を破って散生し、時に群生する。 初めは閉じた唇状(時に Y 字形等になる)で肉厚、外面はほとんど黒色で時にやや暗緑色を帯び、比較的硬く、縦皺がある。 長径 1.5-3.0 mm.、成熟すると開いてゆがんだ盤状になるが縁は盛り上がって内屈する。子実層面は濃さび褐色ないし黒褐色。太く短い柄がある。-- 子嚢は円筒形、厚膜(二重膜)、基部はやや細くなり8胞子を一列に生じる。200-235 × 13.4-17.0 μm. -- 偽側糸は糸状、無色、隔壁があり径 2.0 μm. 程度。上部の数細胞は数珠状に膨らみ、径 5 μm. 程度になる。 全体にゼラチン質に包まれ上部はメルツァー液で青変する。 先端は子嚢より 30-45 μm. 程度長く伸びて子実上層となり、褐色の物質で互いに合着する。-- 子嚢胞子は長楕円形、時に左右不対称、初め淡色だがやがて厚膜褐色になり横に3隔壁をほぼ等間隔に生じ、隔壁部はややくびれる。 表面は平滑、内容は小さい泡状あるいは各細胞に比較的大きな油球が1つある。30.3-34.3 × 9.7-12.0 μm. -- 子実体の基部、樹皮下には小さな黒色かさぶた状の子座状組織がある。

[コメント]
地上の軟らかい不明種の朽木に発生していたもの。ほぼ年中見かける。 種々の朽木に発生するが、フジやニセアカシア等のマメ科の落枝に多く、落下したフジの莢果表面に群生する事も多い。 Tanaka and Hosoya (2006) によって屋久島から記録されていて、京都付近では普通種。 熱帯から亜熱帯を中心に分布する R. rufulum はいくつかのクレードに分けられることが Murillo et al. (2009) によって報告されていて、それらは子実層の色、子嚢胞子の大きさ、外面の皺の有無等でも区別できるという。 また、シノニムとされている Tryblidiella fusca (Ell. & Everh.) Rehm とは子実層の色などに若干の差異があるとされる。 京都付近の本種は外面には顕著な縦皺があり、子実層が濃さび褐色のものと、ほとんど黒色のもの等があり、成熟度の違いかも知れない。 共に Tryblidiella fusca や Murillo et al. (2009) の Clade II に近い特徴を持つようだ。 子実層の色以外では明瞭な区別点を見いだせないが、おそらく複数種に分けられるものだろう。

[別図2] 9月18日撮影。子実層がさび色を帯びるもの。

[参考文献]
Kutorga and Hawksworth (1997): A reassessment of the genera referred to the family Patellariaceae (Ascomycota). (Systema Ascomycetum ; 15(1-2), p. 1-110).
Murillo et al. (2009): Molecular data indicate that Rhytidhysteron rufulum (ascomycetes, Patellariales) in Costa Rica consists of four distinct lineages corroborated by morphologilcal and chemical characters. (Mycological research ; 113, p. 405-416).
Tanaka and Hosoya (2006): Some new records of Loculoascomycetes from Yakushima Island, Southern Japan. (Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo. Ser. B, 32(4), p. 151-160).
Voorhees (1939): The validity and morphology of two Tryblidiella species. (Mycologia ; 31(2), p. 113-123).

[初掲載日: 2007.04.09, 最終更新日: 2018.12.14]