Rhytisma sp. no.3

Rhytisma sp. no.3

Rhytisma sp. no.3
リティスマ属菌。5月4日撮影。

[特徴]
子座は夏頃からカエデの葉表面に黒色の薄いかさぶた状斑点となって発達し、直径 3-8 mm. 程度の多角形状あるいは不正円形、時に融合する。 子座の周囲の葉は黄変する。子座表面は黒色、ややつやがあり、最初は殆んど平滑だが秋には迷路状の隆起が僅かに現れる。隆起は細く、時に分岐し、1 mm. 幅に3本程度。 越冬後には明瞭な畝状になり、子実層が成熟し湿ると膨らんで最上部が裂開し子実層が現れる。 子実層は最大幅 180 μm. 程度、表面は無色だがルーペ下では灰色に見える。-- 子嚢は長棍棒形、下半は細長く伸びる。先端は殆んど肥厚せず、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を束状あるいは不明瞭な2段に生じる。110-126 × 9.4-11.5 μm. -- 側糸は糸状、無色、直線的、基部付近には隔壁があり内容はほぼ一様、径 1 μm. 程度。-- 子嚢胞子は棍棒形、僅かに左右不対称、無色、薄壁、平滑、下半はやや細まる。両端付近に数個の小さな油球がある。被膜は認められない。16.5-20.0 × 3.0-4.0 μm. -- 子実下層は無色。子座表面の裂開する部分に特別の構造は確認できなかった。 子座内部は無色で径 5-12 μm. 程度で比較的薄壁で淡色の多角形の細胞からなり、細胞間には黒褐色ヤニ状の物質が付着する。

[コメント]
イタヤカエデ類(葉が5裂で全縁のカエデ。細かく変種などに分類されているが、あまり詳しくないので広義のイタヤカエデの仲間、としておく。)に発生する。 秋に生葉上の病徴を見て Rhytisma acerinum だと思い、目印をつけておいて翌春に落葉上の子座を採集したもの。 採集時には子座表面に繊細な迷路状隆起がはっきりと形成されていて、図鑑などに見る R. acerinum とは少し様子が違うようだと思った。 湿室に入れると翌日には子実層が現れ、子嚢胞子を射出し始めた。子嚢胞子は短く、R. acerinum とは明らかに異なる。 外国の文献で図示されている R. acerinum は独立した小さな短い子実層が多数密集して形成される種のようだが、 日本隠花植物図鑑 (1939) の plate 138, fig. 2 には、細長い線形で迷路状の子実層が図示されている。

[別図2] 10月10日撮影。生葉上の子座。表面には僅かだが迷路状の隆起が形成され始めている。
[別図3] 5月1日撮影。越冬後、乾燥した枯葉上の子座。

[参考文献]
Weber and Webster (2002): Teaching techniques for mycology 18. Rhytisma acerinum, cause of tar-spot disease of sycamore leaves. (Mycologist ; 16(3), p. 120-123).

[初掲載日: 2018.05.28]