Sarcoleotia globosa

Sarcoleotia globosa

Sarcoleotia globosa (Sommerf.) Korf
サルコレオティア グロボサ。2月11日撮影。

[特徴]
子実体は子実層が形成される頭部と柄からなり全体が軟らかい肉質で粘性は無い。 頭部は肉厚の不正ドーム形、径 3-6 mm. 程度、表面は平滑、淡いベージュ色から淡あずき色、中実、縁は内側に反り返り、全縁。下面は同色あるいは僅かに淡色、殆んど平滑。 柄は円柱状で時にやや扁平、頭部とは明瞭に分かれ、頭部より淡色、中実、表面は小さくささくれてまばらで半透明な鱗片状になる。高さ約 7-15 mm.、径 1.5-2.5 mm. -- 子嚢は細棍棒形、薄壁、先端は肥厚して頂孔はメルツァー試薬でやや広く青変し、下半は時に不規則にこぶ状に膨らみ、基部にはかぎ形構造がある。8胞子をほぼ2列に生じる。128-165 × 9.2-12.9 μm. -- 側糸は糸状、分岐、隔壁があり、径 2.5-3.0 μm.、上半は緩やかに屈曲し、先端細胞はやや膨らんで径 3.4-4.3 μm.、僅かに褐色を帯び、ほぼ一様な内容物がある。-- 子嚢胞子は紡錘形あるいは細棍棒形で僅かに湾曲する事が多い。先端は丸く、下半は細まり、末端はやや尖る。無色、薄壁、ほぼ一列に並ぶ油球を含む。 少なくとも射出された新鮮な子嚢胞子には隔壁は見られない。胞子紋は白色。22.9-32.8 × 3.8-4.8 μm. -- 子実下層は淡褐色、径 2-3 μm. の菌糸からなる密な絡み合い菌糸組織、頭部髄層は径 15 μm. 程度までに膨らむ無色薄壁の菌糸からなる。 柄髄層は径 4-9 μm. 程度の無色薄壁の菌糸が平行に走る。外皮層との境界は不明瞭、表面付近の菌糸は径 15 μm. 程度までになり、隔壁部はやや括れる。 所々で立ち上がり、反り返るようになって束状に盛り上がる。先端付近の細胞で 20-35 × 4-8 μm. 程度、一個の油球を含むものが多い。

[コメント]
販売されているエリカ ダーレンシス (Erica ×darleyensis) のポットに発生したもの。生産地は長野県、佐々木花卉農園。 10年程前からエリカの鉢にズキンタケ様の盤菌類が発生する事が話題になっていて、その特徴から Sarcoleotia globosa だろうと思っていた。 発生は日本には野生しないエリカ属のポットに限られるとの事なので、おそらく外来種だろうと思い、積極的に園芸店を巡ったりはしなかった。 今冬、クロズキンタケ属のキノコ (Sarcoleotia sp. no.1) を採集したので、 やはりこの菌も比較のために自分で確認しておきたいと思って園芸店で探すことにした。 近所のホームセンターで園芸コーナーを覗いたら案外すぐに見つかったので、数本生えているポットをひとつ購入して観察した。 頭部の色は変異がやや大きいようで、かなり濃い褐色の子実体もあるが概して淡色で、肉眼的、顕微鏡的特徴共に Sarcoleotia sp. no.1 とは異なるように思える。 ヨーロッパや北米の高緯度地域を中心に広く分布するようだが、中国江西省井冈山での記録 (Zhuang and Wang, 1998) がある。

[参考文献]
Huhtinen (1985): Mycoflora of Post-de-la-Baleine, Northern Québec, Ascomycetes. (Naturaliste canadien ; 112, p. 473-524).
Schumacher and Sivertsen (1987): Sarcoleotia globosa (Sommerf.: Fr.) Korf, taxonomy, ecology and distribution. (Arctic and alpine mycology ; 2, p. 163-176).
Zhuang and Wang (1998): Some new species and new records of discomycetes in China. VIII. (Mycotaxon ; 66, p. 429-438).
廣瀬 他 (2018): 本邦で流通するエリカ属植物の栽培ポットで子実体形成する Sarcoleotia 属の分類と生態. (平成30年度日本菌学会関東支部年次大会一般講演).

[初掲載日: 2020.02.25] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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