Scutellinia cejpii

Scutellinia cejpii

Scutellinia cejpii (Velen.) Svrček.
アラゲコベニチャワンタケ属菌。10月31日撮影。

[特徴]
朽木の材部に発生する。子嚢盤は肉厚で浅い皿状、直径 6-9 mm.、子実層面は橙色、平滑。縁には比較的短い濃褐色の縁毛が密生する。 外面は淡色で濃褐色の短い毛がまばらに生じる。柄は無く、基質に比較的広く固着する。肉質は柔らかい。-- 子嚢は円筒形、先端には蓋があり、メルツァー液には呈色しない。8胞子をほぼ一列に生じる。255-290 × 17-20 μm. -- 側糸は糸状、基部付近で分岐し、隔壁があり、径 3.5-4.2 μm.、先端は槍状ないし棍棒状に膨らんで 10 μm. までになる。 全体に淡橙色の内容物があるが、先端に向かって淡色になり先端細胞ではほとんど無色。-- 子嚢胞子は長楕円形で時にやや左右不対称、無色、泡状の内容物がある。22.9-24.6 × 11.1-12.6 μm.。 表面にはコットンブルーによく染まるやや細かい疣状突起がある。疣状突起はやや不揃いで径 1 μm. 程度、高さは径と同等ないしやや低い。 ほぼ円形で時に固まって生じ、また細く連絡する場合がある。-- 托髄層は絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 200-360 μm.、ほぼ無色の径 120 μm. までの多角形の細胞よりなる。-- 縁毛は外皮層深部から生じ、褐色厚膜、少数の隔壁がある。先端は尖り、基部はわずかに括れ、その先が 2-4 本に分岐して根状になる。基部付近の最大幅は 37-43 μm.、長さは 400 μm. に達する。 外面の毛もほぼ同様だが短い。

[コメント]
流水脇のスギと思われる濡れた伐採木に発生していた物。少なくとも京都の低山帯では出会う機会の少ない種類である。 子嚢胞子表面の疣状突起の様子は同一子嚢内の胞子でもかなり大きさ等の変異が大きいが、先端が尖らない低くて丸い小型の疣がややまばらに散らばるのが典型のようである。 Schumacher (1990) がシノニムとしている S. verrucipolaris Denison は「北海道大学中川地方演習林産菌類(1969 日本菌学会採集会)」 (日本菌学会会報 ; 10(2), p. 96-99)で記録されている。
フランスの Beñat Jeannerot 氏に標本を送って同定して貰ったもの。

[参考文献]
Schumacher (1990): The genus Scutellinia (Pyronemataceae). (Opera botanica ; 101).

[初掲載日: 2013.04.17]