Scutellinia sp. no.11

Scutellinia sp. no.11

Scutellinia sp. no.11.
アラゲコベニチャワンタケ属菌。6月10日撮影。

[特徴]
地上に単生あるいは少数が散生する。子嚢盤は浅い皿状から円板状、径 3-7 mm.、子実層面は赤みの強い橙色、縁は全縁で僅かに盛り上がり、肉眼では僅かに暗色に縁どられて見える。 縁毛はまばらで短く、肉眼では確認しづらい。外面は白っぽく、褐色の短毛をまばらに生じる。柄は無く、やや広く基質に固着する。-- 子嚢は円筒形、有蓋、薄壁、基部は二叉状、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を一列に生じる。255-313 × 22-28 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり径 4.2-5.0 μm.、基部付近で分岐し、先端は棍棒状ないし楕円状に膨らんで 7.1-13 μm. になる。ほぼ全長に亘って赤橙色の内容物がある。-- 子嚢胞子は球形ないし亜球形、無色、内容物は泡状、表面は連絡する疣状の突起があり不完全な網目状になる。 突起を除いて 17.4-20.0 × 17.2-18.3 μm.。突起はコットンブルーに良く染まり、高さ幅ともに 1.2 μm. 程度まで。-- 托髄層は径 10 μm. までの菌糸からなる絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 150 μm. 程度、55-65 × 40-50 μm. 程度までの無色薄壁の多角形細胞からなる。 縁毛は外皮層深部から生じ、厚膜、褐色、隔壁があり、先端は尖り、末端はやや細くなり単一(稀に二叉状)、基部付近の最大径は 17.5-25.5 μm.、長さは 290 μm. までになる。 子嚢盤の縁部には厚膜褐色の棍棒形ないし長楕円形の細胞があり、やや房状に並ぶ。40-58 × 14-17 μm.

[コメント]
スギ植林地の林道脇、腐植の多い粘土質の地上に発生していたもの。 このような子嚢胞子が球形で疣状突起が不完全な網目状の種類は Schumacher のモノグラフには見当たらない。 Han et al. (2010) によって朝鮮半島から記載された Scutellinia jejuensis Han & al. の子嚢胞子は亜球形で網状突起を持つが、疣の高さは 2.5-3 μm. になると言うから別種だろう。

[参考文献]
Han et al. (2010): Scutellinia jejuensis (Pezizales), a new species from Korea. (Mycotaxon ; 112, p. 47-53).
Schumacher (1990): The genus Scutellinia (Pyrenomataceae). (Opera botanica ; 101).

[初掲載日: 2017.10.06]