Scutellinia trechispora

Scutellinia trechispora

Scutellinia trechispora (Berkeley & Broome) Lambotte
マルミアラゲコベニチャワンタケ。6月26日撮影。

[特徴]
地上に散生あるいはやや群生する。子嚢盤は椀状から皿状に開き、径 6-14 mm.、子実層面は平滑、赤橙色、縁は全縁、わずかに立ち上がって低い襟状になり、ルーペ下では淡褐色に見える。 外面は淡色、黒褐色の剛毛を生じ、縁部の毛は長く、密に生じる。柄は無く、やや広く土壌に固着する。-- 子嚢は円筒形、薄壁、有蓋、メルツァー試薬に呈色しない。8胞子を一列に生じるが、4胞子のみが成熟するものが比較的多く見られる。270-315 × 20-24.4 μm. -- 側糸は糸状、隔壁があり、基部以外に分岐は無く、径 3.5-4.5 μm.、先端は棍棒状ないし槍状に膨らんで径 8.5-9.2 μm. までになる。全体に橙色の小顆粒状の内容物を含むが、特に下半に多く、先端細胞はほぼ無色。-- 子嚢胞子は球形、無色、疣状、径 15.4-20.0 μm.、表面の疣状突起はコットンブルーに良く染まり、大型で截頭形(横から見て四角形)で、上面から見るとやや多角形に見え、互いに連絡しない。 最大径 1.8 μm. 程度まで、高さは 3 μm. までになる。-- 托組織髄層は径 10 μm. までになる無色薄壁の菌糸からなる絡み合い菌組織、外皮層は厚さ 300 μm. まで、無色でやや縦長、最大径 80 μm. 程度までの丸みを帯びた多角形細胞からなる。 縁の細胞は棍棒形ないし楕円形、時に先端がやや尖って短針状、淡褐色を帯び、厚膜になるものが多く、50-120 × 11-24 μm.。 縁部の剛毛は外皮層の深部から生じ、黒褐色、厚膜、隔壁があり、先端は尖り、長さ 1000-1500 μm.、基部付近は径 40 μm. に達する。基部はわずかに細って分岐し、2叉あるいは3叉状になるものが多い。 外面下部の剛毛は短く、300 μm. 程度まで、基部は単一あるいは2叉状になる。

[コメント]
照葉樹林内、やや粘土質、まばらにコケの生えた斜面裸地に発生していたもの。子嚢胞子が球形、表面の疣状突起は大型で先端が平らな截頭形であることが近似種との判り易い区別点だろう。 Denison (1961) は、S. trechispora の特徴を剛毛は短く 300 μm. 以下、子嚢胞子の疣の高さは 1 μm. 未満としているが、 Schumacher (1990) は、これは S. barlae (Boud.) Maire に該当する種であるとしている。 出会う機会は比較的少ないが、分布は広そうである。和名は 「検証キノコ新図鑑」(城川四郎著. 筑波書房, 2017)に拠った。

[参考文献]
Denison (1959 [i.e. 1961]): Some species of the genus Scutellinia. (Mycologia ; 51, p. 605-635).
Schumacher (1990): The genus Scutellinia (Pyronemataceae). (Opera botanica ; 101, p. 1-107).
Yao and Spooner (1996): Notes on British species of Scutellinia. (Mycological research ; 100(7), p. 859-865).

[初掲載日: 2021.08.27] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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