Sporodiniella umbellata

Sporodiniella umbellata

Sporodiniella umbellata Boedijn
スポロディニエラ ウンベラータ。8月5日撮影。

[特徴]
栄養菌糸は昆虫(セミ)の遺体上から付近の植物遺体、コケ上等に薄く拡がり、時に白色綿状の小塊となる。-- 胞子嚢柄は栄養菌糸から単生して伸び、下方に垂れ下がる場合が多い。殆んど無色ないし淡黄褐色の絹糸状、長さ 1-3 cm. 程度、時にはそれ以上に伸びる。 表面は平滑、稀に少数の隔壁があり、径 50 μm. 程度。先端で十数本ないし20本程度に分岐して放射状に散開し、径 2 mm. 程度までの薬玉形になる。 分枝の基部は括れ、基部付近で径 25-40 μm.、上半で更に数本に2次分岐して散開する。 2次分枝は直線状ないしわずかに反り返って弓状になり、長さ 450-550 μm. 程度、次第に細くなり、先端は鈍い針状になる。 分枝基部から 70-100 μm. 程度のところから長さ 60-70 μm.、径 17-20 μm. の短い分枝を外方にほぼ直角に伸ばし、先端に胞子嚢を形成する。-- 崩壊前の完全な胞子嚢は確認できなかった。中軸は亜球形ないし広楕円形、淡黄褐色、径 22-32 μm.、カラーは確認できない。-- 胞子は不正球形ないし広楕円形、無色、ほぼ平滑、薄壁、径 4.4-6.3 μm. -- 接合胞子は確認できなかった。-- 栄養菌糸中に厚膜の芽子の様なものが観察される。菌糸の一部に隔壁が形成されて球状に膨らみ、無色、平滑、径 9-20 μm. になる。内容は細かい泡状。

[コメント]
渓流沿いの窪地、コケの生えた地上に落ちたヒグラシ(雄)の遺体に生じていた物。遺体はほぼ外骨格のみになっていた。 胞子は微疣状とされるが、明瞭には確認できず、ほぼ平滑に見える。また、厚膜の芽子様体については言及している文献を見つけられなかった。 熱帯地方から報告された単型属の菌だが、日本でも各地で散発的に報告されている。
ケカビの仲間(接合菌類)で子嚢菌類ではないが、比較的稀な菌の様なので記録を残す意味で掲載する。

[別図2] 8月5日撮影。胞子嚢柄先端部の拡大。

[参考文献]
出川 (2006): まぼろしのカビとの再会 -昆虫に生える珍しいケカビ-. (自然科学のとびら ; 12(1), p. 8).
Boedijn (1958): Notes on the Mucorales of Indonesia. (Sydowia ; 12(1-6), p. 312-362).
Chien and Hwang (1997): First records of the occurrence of Sporodiniella umbellata (Mucorales) in Taiwan. (Mycoscience ; 38, p. 343-346).
Evans and Samson (1977): Sporodiniella umbellata, an entomogenous fungus of the Mucorales from cocoa farms in Ecuador. (Can. J. Bot. ; 55, p. 2981-2984).

[初掲載日: 2017.08.25]