Terriera sp. no. 1

Terriera sp. no.1

Terriera sp. no.1
テリエラ属菌。7月10日撮影。

[特徴]
落葉上にやや退色した不定形の病斑を形成し、その内側裏面に子実体が群生する。周囲には時に不明瞭な褐色の帯線が見られるが、普通は帯線は形成されない。 子嚢盤は表皮細胞中に発達し、広楕円形あるいは両端は時にやや尖って広紡錘形、黒色、つやは無く、350-500 × 200-300 μm. 程度、高さ 150 μm. 程度に盛り上がり、上面はやや平ら、長径のほぼ全長にスリット状の裂け目がある。 成熟時にはわずかに裂開するが、子実層面の色を確認できない。-- 子嚢は細円筒形、先端はほとんど肥厚せず、顕著な構造は認めにくく、メルツァー試薬に呈色しない。下半はやや細まり、基部はこぶ状に膨らむものが多い。8胞子を束状に生じる。102-135 × 5.4-8.0 μm. -- 側糸は糸状、子嚢より長く伸びて子実上層を形成し、上半で時に分岐する。基部付近は隔壁が多く、径 2-2.8 μm.、中ほどで径 1.2-1.6 μm.、先端はやや膨らんで径 3 μm. までになり、時にこぶ状。無色で顕著な内容物は認めにくい。-- 子嚢胞子は糸状、緩やかに屈曲して弓形になり、無色、薄壁、平滑、両端は僅かに細まる。まばらに油球を含み、隔壁は無い。時に不明瞭な薄いゼラチン様の被膜がある。75-92 × 1.0-1.2 μm. -- 子嚢盤側面と底面は径 2-6 μm. の黒褐色で厚膜の多角形細胞の層からなり、側面で厚さ 30 μm.、底面で厚さ 15 μm. 程度まで。 底面の縁部(子嚢果横断面で両端になる部分)の内側にはほぼ無色の細胞が柵状に並ぶ。上面開口部附近は黒色で堅く密な組織がやや平板状になり、中央で裂開する。舌状細胞は無い。

[コメント]
公園に植栽されたカナメモチ類(レッドロビン等の園芸品種かも知れない。Photinia sp. としておく。)の落葉に生じていたもの。分生子世代と思われるものは確認できない。 中国大陸から、カナメモチ属に生じる菌として T. aequabilis Qing Li & Y.R. Lin(寄主は Photinia villosa、カマツカ。現在は Pourthiaea 属とされる)や T. intraepidermalis D.D. Lu & Y.R. Lin(寄主は Photinia prunifolia。和名なし? オオカナメモチに近い種か?)が記録されている。 両者とも子嚢果は両面生、T. aequabilis は帯線があり、T. intraepidermalis は帯線が無く、分生子果を生じるとされ、どちらとも微妙に異なるように思える。 他に多犯性の種もあるので、不明種扱いにしておく。

[参考文献]
Li et al. (2015): A new species of Terriera (Rhytismatales, Ascomycota) on Photinia villosa. (Mycotaxon ; 130, p. 27-31).
Lu et al. (2015): Terriera intraepidermalis sp. nov. on Photinia prunifolia from China. (Mycosystema ; 34(6), p. 1025-1030).
Zhang et al. (2020): Morpho-phylogenetic evidence reveals new species in Rhytismataceae (Rhytismatales, Leotiomycetes, Ascomycota) from Guizhou Province, China. (MycoKeys ; 76, p. 81–106).

[初掲載日: 2024.01.20] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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