Trichocoma paradoxa

Trichocoma paradoxa

Trichocoma paradoxa Junghuhn
マユハキタケ。5月5日撮影。

[特徴]
朽木の主に切断面に生じる。初めはまんじゅう形、径 4-6 mm.、上面は黄白色で粉状の膜に被われ、側面の外被膜は椀状(ドングリの殻斗様、と形容されることが多い)で褐色、表面は粗造で硬いコルク質、内被膜は薄く、淡黄色、後に上面が破れて基本体が現れる。 基本体は柱状に伸びて高さ 8-14 mm.、繊維束状、上半は細く裂けて拡がり刷毛状、淡褐色、僅かに紫色を帯び、径 2-3 μm. のほぼ無色で表面が時に粗造な菌糸よりなる。-- 子嚢は基本体の基部付近に散在するが、膜は消失性のため成熟した子実体では明瞭な子嚢の確認は難しい。球形ないし楕円形、薄壁、8胞子を生じる。長径 11.6-16.0 μm. -- 子嚢胞子は楕円形、淡黄褐色、 5.1-6.0 × 4.5-5.2 μm.、表面は切れ切れの不規則な横畝状の隆起が数本程度あり、一部疣状ないしとげ状に見える。-- 不完全世代の子実体(分生子座)も同時に発生する。扁平なまんじゅう形、径 2-5 mm.、黄色。内部は緻密でかなり硬い。上半に分生子柄が密に形成され、表面は粉状。 分生子柄は僅かに黄色味を帯び、ほとんど平滑、ペニシリを複輪生状に生じる。フィアライドは輪生状、長とっくり形、11-15 × 2.2-2.8 μm.、分生子は広楕円形、殆んど無色あるいは淡黄色、平滑、薄壁、2.5-3.0 × 2.5 μm.

[コメント]
かなり腐朽の進んだ朽木に散生あるいは群生する。国内では暖地の沿岸部のタブノキからの記録が多い。 「京都府レッドデータブック2015」では絶滅危惧種とされていて、府内の分布区域は宮津市となっているから、おそらく日本海側沿岸部のタブ林に発生しているのだろう。 宮津市以外の府内での正式な記録を確認できていないが、京都府南部、内陸部の照葉樹林内にも発生し、大きな朽木(伐採木)の主に切断面に見られる。 発生する朽木は限定され、発生量も少ないが、分布は広そうである。 発生していた朽木の周囲にタブノキは見当たらず、腐朽が進んでいて樹種がわからなかったので材を検鏡してみた。 導管は径 100 μm. 程度で2ないし3個が複合しているものが多い。タブノキに似ていると思うが確信が持てない。周囲にはヤブニッケイが多く、材の構造はヤブニッケイに似ている気もする。 文献ではタブノキ以外ではシイやイヌビワに発生するとされ、「九州で見られるきのこ なば」 では他にイチイガシを挙げている。 発生地付近にはシイ(ツブラジイ)の倒木が多く、腐朽程度の様々な朽木があったが、マユハキタケの発生は見られなかった。 安田 (1923) は「スギの樹皮面に生ず」と記していて少し異質な感じがするが、ニュージーランドでは Agathis(ナギモドキ属、マツ目)類から記録がある。

[別図2] 5月19日撮影。不完全世代の子実体。

[参考文献]
伊東 (1996): 日本産広葉樹材の解剖学的記載 II. (木材研究・資料 ; 32, p. 66-176).
小林・印東 (1943): カキノミタケ屬に就いて. (滿洲帝國國立中央博物館論叢 ; 5, p. 15-34).
安田 (1923): 菌類雜記 (134). (植物學雜誌 ; 437. p. 136-138).
Kominami et al. (1952): Is Trichocoma paradoxa conspecific with Penicillium luteum? (Nagaoa ; 2, p. 16-23).

[初掲載日: 2018.06.08]