Trichoglossum octopartitum?

Trichoglossum octopartitum

Trichoglossum octopartitum Mains?
テングノメシガイの一種。7月8日撮影。

[特徴]
コケ中等に単生ないし少数が群生する。普通はヘラ形やシャモジ形、時にはややトサカ状になる事もある。高さ 2-5 cm. 子実層は頭部に出来るが柄との境界は肉眼でははっきりしない。幅 0.5-1 cm.、厚さ 2-3 mm. 程度になる。ほぼ黒色でつやは無く、ややベルベット状。 柄は円筒形、直径 2-5 mm.、コケ下部に伸びる。全体やや柔らかい肉質で粘性は無い。-- 子嚢は円筒形、先端はやや円錐状、末端は急に細くなり基部は二叉する。8胞子を束状、やや上下二列に生じる。先端はメルツァー液で青変する。210-220 × 20.0-23.6 μm. -- 側糸は糸状、径 2.6-3.0 μm.でまばらに隔壁がある。先端付近はやや淡褐色、緩やかにカーブするか逆J字形になってわずかに膨らみ 5 μm. までなる。-- 子嚢胞子は褐色、長円筒形で平滑、わずかに湾曲し両端に向かって細まる。未熟時は多くの油球を含むが、後に7隔壁ができ油球は不明瞭になる。 隔壁はほぼ等間隔にできるが、両端の細胞はやや長めである。100-134 × 5.7-6.2 μm. -- 子実体表面には突出する黒褐色の剛毛がある。厚膜で直線状、先端は尖り基部は細くなる。下半に隔壁があるものがある。150-270 × 7-9 μm.

[コメント]
庭園のコケの中や湿った地上等に発生する。今井博士のモノグラフには、 子嚢胞子が7隔壁の Trichoglossum 属菌としてナナフシテングノメシガイ Trichoglossum walteri 一種が挙げられている。 T. walteri の胞子は 100 μm. を超えることは少ない様で Imai (1941) には 52-112.5 μm.、Mains (1954) には (60-) 72-100 (-125) μm. とあるが、 今回採集した菌の子嚢胞子はすべて 100 μm. を超え、両端は明らかに細長く、過去に採集した T. walteri と比べても異なる。 むしろ T. octopartitum に一致するのでこの名前を当てておく。アメリカに分布する種だが中国などからも報告されている。

[参考文献]
Imai (1941): Geoglossaceae Japoniae. (Journal of the Fac. of Agr. Hokkaido Imp. University ; 45(4). p. 155-264)
Mains (1954): North American species of Geoglossum and Trichoglossum. (Mycologia ; 46, p. 586-631)
中国真菌志. 第8巻.

[初掲載: 2006.11.21]