? sp. no.5.

? sp. no.5

? sp. no.5. = Kotlabaea benkertii Perić?
地上に群生する小型のチャワンタケ類。6月30日撮影。

[特徴]
子嚢盤は初めは半球形椀状、後に浅い皿状ないし平板状からやや凸型に開き、直径 3-6 mm. 程度。 子実層面は淡い黄色からレモン色、縁は全縁で、外面はやや淡色で無毛、 柄は無くやや広く固着し、基部付近にはわずかに綿状の白色菌糸が拡がる事がある。肉質は柔らかく、乳液や変色性は観察できない。-- 子嚢は円筒形、基部はに細長く伸び、かぎ状構造は見られない。先端は有蓋でメルツァー試薬で呈色しない。8胞子を一列に生じる。188-242 × 10.8-12.9 μm. -- 側糸は糸状でほとんど無色、隔壁があり径 2.0 μm. 程度。先端付近は僅かに膨らんで 4 μm. 程になり先が丸く曲がるものが多い。-- 子嚢胞子は楕円形ないし広紡錘形、無色、やや厚膜。細かい泡状の内容物を含み、de Bary babble は認められない。14.6-17.4 × 8.0-9.2 μm. -- 托髄層はやや太めの菌糸よりなる絡み合い菌糸組織、托外被層は無色薄壁、直径 20 μm. 程度までの球形の細胞層よりなる。 基部付近の最外層の細胞からは毛状の菌糸が伸びることがある。薄壁で先端は丸く、直径 3-4 μm.、隔壁があり、長さは 200 μm. に達する。 組織細胞内には細かい油球状の内容物が多く、水でマウントすると大量に拡散する。

[コメント]
夏から秋期、スギやヒノキ等の針葉樹の落葉、腐朽材上や、それらの腐植質が混じる地上に群生することが多い。 Pyronemataceae には間違いないと思うがこの科の属の概念がよく理解できてないのでなかなか先に進めない。 先端の曲がる側糸や肉眼的な特徴は Pulvinula 属に似ている。 Pulvinula 属の子嚢胞子は基本的には球形だが、子嚢胞子が楕円形の種がいくつかあり、Pulvinula ascoboloides Korf & Zhuang は特徴がよく似ている。 ただし、この種の子嚢胞子が持つとされるコットンブルー染色性の被膜は観察できない。 P. ascoboloides は、Yao and Spooner によって Boubovia 属に移された(Boubovia ascoboloides (Korf & Zhuang) Yao & Spooner)が、 Boubovia 属にも B. ascoboloides 以上によく一致する種は見当たらず、該当する属もよくわからないでいたのだが、 最近記載された Kotlabaea benkertii Perić は、特徴が良く一致すると思う。 K. benkertii は 針葉樹林内等に発生するというから、発生環境もよく似ている。

[別図2] ヒノキ植林地内。6月22日撮影。

[参考文献]
Korf and Zhuang (1984): The ellipsoid-spored species of Pulvinula (Pezizales). (Mycotaxon ; 20(2), p. 607-616).
Perić (2012): Une espèce nouvelle du genre Kotlabaea (Pezizales), K. benkertii sp. nov. (Mycol. Monten. ; 15, p. 15-30).
Yao and Spooner (1996): Delimitation of Boubovia and Pulvinula. (Mycological research ; 100(2), p. 193-194).

[初掲載日: 2005.03.07. 最終更新日: 2014.07.15]