ワインの栓に酒石酸の結晶がついていた

料理に使うから、と言って一滴も酒の飲めない妻が買ってくるワインをたまに飲むことがある。
別にワイン通でもないから白でも赤でも気にしないし、甘口だろうが辛口だろうが適当に飲んでいるのだが、
先日栓を開けるとコルクの内側にきれいな結晶がついていた。(右が拡大。最大の結晶で長さ2ミリほど。)
ShusekisanShusekisan
酒石酸の結晶(酒石)だと気が付いた。話には聞いた事があるが見るのは初めてだし、赤ワインの色素のおかげでアメジストのような美しさだ。
正確に言えばカリウム塩の結晶だと思うけれど、ルーペで覗いていて学生の頃に有機化学で習った光学異性体の事を思い出した。
光学異性体の厳密な定義はともかくとして、簡単に言ってしまえば右手と左手のように同じ形だけれど重ね合わすことが出来ない化合物の事だ。
この光学異性体の存在を初めて見つけたのがパスツールだ。パスツールは狂犬病ワクチンの考案者といった細菌学者のイメージが強いけれど、
最初はまず化学者として業績を上げているのだ。
彼は酒石酸塩(酒石酸ナトリウムアンモニウム)の結晶に右手と左手のような二種類がある事を発見し、
それを選別することによって異性体を分割する事に成功したというのだが、
その選別方法というのが顕微鏡を使って微小な結晶を一個づつより分ける、というものだったらしいのだ。
酒石酸ナトリウムアンモニウムと酒石酸カリウムの結晶は形が違うはずだが、こんな結晶をより分けるのは並大抵の根気ではないなと思った。

ところで酒石の味だが、齧ってみたけれどほとんど無味で僅かに苦味が感じられるといった程度のものだった。

(2009.05.18 記)