ロイヤルコペンハーゲン展を観てきました。

ゴールデンウィークに大阪市立東洋陶磁美術館で開催中の特別展「デンマーク王室の磁器コレクション ロイヤルコペンハーゲン」を観に行った。
こういう陶磁器を観に行くのは嫁の趣味の影響だけれど、「フローラ・ダニカ (Flora Danica)」で有名なので付いて行くことにしたのだ。
「Flora Danica」は 1761年から 100年以上かけて出版されたデンマーク植物誌。顕花植物以外に藻類や菌類も収録されており
それを基に作られたという事でキノコ柄の皿等も出展されているから観に行こう、というなのだ。
嫁は学生時代に東洋陶磁美術館には行った事があるので「場所は知ってる、任せとき」と自信満々だったのに
小雨降る中、淀屋橋駅を出たとたんに「ん? どっちやったっけ?」と言って地図を確認してる。
大丈夫かと思ったが、すぐに方向も判って歩き始める。それとなく街路樹や植え込みの地面をチェックするがキノコは何も生えてない。
数分歩いただけで東洋陶磁美術館に無事到着。入場券を見せて中へ入る。

いくつかの展示室に分かれているが「ブルー・フルーテッド」等の展示品は軽く流して「フローラ・ダニカ」の展示室へ。
まず展示室に入ったところで革装フォリオ版の Flora Danica が二冊展示されていて、一冊は真ん中あたりの彩色図版が開かれている。
さすがに18世紀の銅版画は見事だ。図書館員としては標題紙とか透かし模様とかを確認したいのだがケースに入っているので仕方ない。
それぞれの展示品には名刺大程度の図版のカラーコピーに添えて植物の名前が「オトギリソウ属の一種」等と説明されている。
日本に分布していない種だろう、属名で示されているものが多いようだ。
顕花植物はそれほど詳しいわけではないので、なるほどねと思いながら観ていく。
そのうちに目指すキノコの皿が。担子菌類は10枚ほど、ホコリタケは表面の疣状突起なども結構丁寧に描かれている。
帽菌類のほとんどがハラタケ属の一種、と説明があるのはおそらく元の図版で属名が Agaricus とされているからだろう。
1700 年代後期の製作というから Fries 以前だしまあ当然かな、でも今の学名での説明も欲しいなあ、と思いながら進む。
そんな中、小さなカスタードクリーム入れの説明に「チャワンタケ属の一種」 とあり、妙なキノコが描かれている。
それはコケの塊の様な物に群生している白い盤状のキノコで、表面にはまばらに黒点がある。
大きさはコケと比べるとおそらく直径1センチ近くはありそうだ。これはいったい何だろう ...?
多分 Peziza 属となっていたものであろうがちょっと見当がつかない。表面に黒点があるところを見ると Saccobolus あたりか等と考える。
でもこんなに大きくなる種なんてあったっけ。しかもいやに肉厚だ。
その場ではよくわからず、「これはチャワンタケとは違うんじゃないか」などと嫁には言っておいた。

ヒイロチャワンタケを描いた皿もあった。後ろにはサナギタケらしい冬虫夏草が描き添えられている。
ところが説明には「ホウキタケ属の一種」とある。「え?」と一瞬思ったが「そうか、サナギタケは Clavaria だったんだな。」と気付く。
でもなあ、ヒイロチャワンタケのほうが前面に大きく描かれてるしこれはひどいんじゃないかなあ、とチャワンタケに妙な肩入れ。
展示を見た後は館内の喫茶室でロイヤルコペンハーゲンセットなるもの(紅茶とクッキーがロイヤルコペンハーゲンの器に入ってる)を食べて帰った。

後日、Flora Danica の図版を公開しているサイトで調べてみると
前述の謎の菌は Peziza punctata (= Poronia punctata) だった。うーむ、核菌類だったか。思いつかなかった。
Poronia 属って結構古くからある属だと思っていたけれど、P. punctata は最初 Peziza として記載されたのか。
Poronia punctata は主に草食獣の糞に発生する糞生菌だ。コケの塊の様だと思っていた物はたぶん馬糞だろう。
そういえば「毒キノコをデザインした器は見当たらない」との説明があった。
王室で使われる食器に毒をイメージさせる図柄を描くわけにはいかない、という理由だ。確かに毒キノコが描かれた皿で食事するのは嫌かもしれない。
でもテングタケ類とかをデザインすれば結構見栄えあるのに、と思って観ていたのだが、毒キノコは描かなくてもうんこは描くんだな。
この方がよっぽど失礼だと思うけれど。
ヒイロチャワンタケの方はやはりサナギタケ(Clavaria militaris、もちろん現在はCordyceps militalis)と同じ図版に描かれていた。

(2005.05.09 記)