Ascocoryne sarcoides
Ascocoryne sarcoides (Jacq.) Groves & Wilson
ヒメムラサキゴムタケ。11月15日撮影。
[特徴]
広葉樹朽木上に散生ないし群生する。子実体は肉厚の皿状、クッション状、あるいは倒円錐形。
直径 6-15 mm.、子実層面は平滑、淡赤紫色、縁は全縁で時に波打ち、外面は平滑あるいは弱いちりめん状の皺があり、ほぼ同色。
ほとんど無柄あるいは短い柄が中央にあり基質に固着する。全体ゼラチン質で軟らかい。--
子嚢は円筒形、先端は肥厚し頂孔はメルツァー試薬で青変する。8胞子をほぼ1列に生じ後にはやや不規則な2列になって上部に固まる。147-190 × 10.2-12.0 μm. --
側糸は糸状、すくなくとも上半には分岐は見られない。隔壁があり径 1.5 μm. 内外、先端は棍棒状に膨らんで径 3.4-4.3 μm. になり、ほぼ無色で泡状の内容物がある。--
子嚢胞子は長紡錘形、やや左右不対称、両端は丸く、無色薄壁、平滑。
中央付近に大きな油球が二つ、その外側にやや小さな油球が一個づつあり、間隙には細かい泡状の内容物がある。15.4-21.4 × 4.0-4.8 μm.。
射出時には隔壁は無いが、後に1あるいは3隔壁を生じ、発芽して短い菌糸を伸ばし、先端の2-3細胞は膨らんで広楕円形になる。--
托組織髄層は無色薄壁の径 1-4 μm. 程度の菌糸よりなる絡み合い菌組織で間隙はゼラチン質で満たされる。
外皮層は厚さ 150 μm. 程度、丸みを帯びた淡色薄壁の細胞(45 × 30 μm. 程度まで)からなる。ゼラチン質には包まれず、結晶様の付着物も見られない。--
付近にアナモルフの子実体が同時に発生する場合がある。棍棒形で時に房状に生じ、高さ 5-15 mm.、径 5 mm. 程度までになる。
全体ゼラチン質、表面はほとんど平滑で時にやや皺状、赤紫色、基部は細まって短柄状になるが境界は不明瞭。
分生子はソーセージ形、無色、両端に小油球がある。2.8-4.0 × 0.8-1.2 μm.
[コメント]
伐採されたコナラの朽木に発生していた物。秋から初冬にかけて発生する。
ムラサキゴムタケ (A. cylichnium) とほぼ同時期、同環境に発生し、一つの朽木上に混生する事もあって肉眼での区別は難しいが、A. sarcoides の方がやや淡色、肉厚で柔らかい。
アナモルフの発生が多い場合とほとんど無い場合があるが、要因はよくわからない。和名は追補北陸のきのこ図鑑に拠った。
[別図2]
沢沿いの湿った朽木上(おそらく広葉樹)に発生していた物。付近にアナモルフの子実体は観察できなかった。10月23日撮影。
[別図3]
アナモルフの子実体。11月15日撮影。
[参考文献]
Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. v. 1. Ascomycetes.
[初掲載日: 2010.01.18, 最終更新日: 2016.02.18]