Bombardia bombarda
Bombardia bombarda (Batsch) Schröter.
ボンバルディア ボンバルダ。9月28日撮影。
[特徴]
腐朽材上に群生する。単独あるいは数個程度の子嚢殻が共通の基部から生じ、さらにそれらが集合して径数ミリから 1 cm. 程度までに広がる。
子嚢殻は表在性、棍棒形ないし砲弾形、黒褐色で表面はほとんど平滑、孔口はルーペでは認めにくい。940-1300 × 420-490 μm. --
子嚢は長い尾のある棍棒形、270-360 × 10-12 μm.(子嚢胞子が含まれる部分は 120 μm. 程度)、8胞子をほぼ2列に生じる。
先端にはメルツァー試薬に呈色しない先端リング(2個の点状に見える)があり、やや離れて径 2 μm. 程度の小球体がある。--
側糸は鞭状、無色、薄壁、隔壁があり基部付近で径 5 μm. 程度。--
子嚢胞子は円筒形、薄壁、ほとんど無色、両端は丸く、先端側が僅かに太まる。
全体が緩やかに屈曲し、下半で弱く折れ曲がり全体で「へ」の字状になる。内容は油球が一列に並ぶ。
32.8-42.9 × 3.4-5.2 μm.。両端に細い円錐形鞭状で長さ 3-6 μm. の付属糸があるが脱落しやすい(特に先端側)。
子嚢から放出後、隔壁を生じて2細胞になる。先端側は膨らんで黒褐色厚膜の擬宝珠形となり 11.4-14.8 × 7.1-8.6 μm.、
後半部は無色薄壁のままで内容物は不明瞭になり後には空になるように見える。--
子嚢殻殻壁は中央付近で厚さ 90-100 μm. 程度、最外層は径 5-8 μm. の淡褐色の多角形細胞からなり、表面には褐色の物質が付着する。
最内層には幅 2 μm. 程度の淡褐色の細胞が数層あり、中間は絡み合い菌糸組織からなる。
構成菌糸はほぼ無色、分岐と隔壁があり径 1.2-2.0 μm.、やや厚膜でゼラチン化しているように見える。
[コメント]
ブナ林内、おそらくブナだろうと思われる朽木片の材部に発生していた物。
子嚢殻は朽木生の近似の核菌類(例えば Lasiosphaeria 等) の様に硬くは無く、やや軟骨質で弾力がある。
子嚢胞子の頭部が膨らんで隔壁を生じ褐色になるのは子嚢から放出後かなり時間が経ってからのようである。
日本産菌類集覧(勝本, 2010)には異名の Bombardia fasciculata (Fr.) Fuckel ex P. Karst. の学名で収録されていて、
文献として日本菌類目録(訂正増補版, 1927)を挙げている。
そこには 「イヰギリノ幹(川上村)但シ胞子小也」 とあるが典拠は示されておらず、
原 (1954) の日本菌類目録でも上記目録の掲載ページを引用して「ブナ、イイギリ樹皮上」としかない。
Bombardia 属はソルダリア目ラシオスパエリア科に属するが、
日本菌類誌3巻3号「ソルダリア目・ディアポルテ目」にも記述が無く(疑問種としても挙げられていない)、日本産の詳しい報告を見つけられない。
[参考文献]
Ellis and Everhart (1892): The North American Pyrenomycetes.
Lundqvist (1972): Nordic Sordariaceae s.l. (Symb. bot. Upsal. ; 20(1), p. 1-374).
[初掲載日: 2014.11.07]