Calycina herbarum
Calycina herbarum (Pers.:Fr.) Gray = Hymenoscyphus herbarum (Pers.:Fr.) Dennis
カリキナ ヘルバルム。11月17日撮影。
[特徴]
子嚢盤は枯茎上に群生する。椀形からほとんど平らな盤状に開き、子実層面は時に凸形になる。直径 1-2 mm. 程度。全体乳白色ないしわずかにクリーム色を帯びる。
縁は全縁、外面も白色で無毛だがルーペで見ると粉状あるいは細かいフエルト状に見える。中心に短く細い柄がある。--
子嚢は棍棒形、上端はやや円錐状に尖って肥厚し、頂孔はメルツァー試薬で青変する。8胞子を二列に生じる。94-104 × 7.1-8.6 μm. --
側糸は糸状で上下同幅、径 2-2.5 μm. 無色で隔壁がある。上半には無色で一様な内容物がある。--
子嚢胞子は長楕円形ないし紡錘形、左右不対称ないし弓形に曲がる。無色薄壁で数個の油球を含み中央に隔壁がある。隔壁部はほとんど括れない。
一端あるいは両端から発芽し、発芽管を伸ばす。12.9-17.2 × 2.8-3.6 μm. --
托組織髄層は無色薄壁の菌糸からなる絡み合い菌糸組織。
外皮層は厚さ 80 μm. 程度まで、5-10 × 3-6 μm. 程度の無色薄壁の細胞からなる矩形菌糸組織ないしやや多角菌糸組織状、表面には細電球形あるいは棍棒形の毛状細胞が散在し、わずかに立ち上がる。
8.5-22.8 × 3.2-4.3 μm.、隔壁は0あるいは1個、先端細胞には一様な明るい内容物を含むものが多い。
[コメント]
秋頃、イラクサ類やタデ類の枯茎に発生する。文献では子実体は白色からクリーム色ないし淡黄色とされている。
従来 Hymenoscyphus 属に置かれていたが、現在は外皮層構造の違いなどから Calycina 属とされることが多い。
子嚢基部にかぎ形構造が無いもの (C. herbarum) と有るもの (C. subherbarum nom. prov. Baral) が区別できるとされ、共に子嚢胞子は発芽して分生子を生じるらしい。
上掲画像と[別図2]の菌はかぎ形構造が認められ、子嚢胞子はかなり長い発芽管を伸ばすが分生子を確認できなかった。
また、[別図3]の菌は肉眼的に区別できないが、子嚢基部にかぎ形構造がなく、子嚢胞子は一回り小さい。
複数種に分割されるものと思われるが、広義の Calycina herbarum としてまとめ、今後の課題としておく。
[別図2]
11月22日撮影。 ダンドボロギクと思われる枯茎に発生したもの。
[別図3]
12月9日撮影。 刈り取られて野積みされたコスモスの茎に発生していたもの。子嚢頂孔はメルツァー試薬で赤紫色になり、基部にはかぎ形構造が認められない。
子嚢胞子は長楕円形で僅かに左右不対称、11.5-16.6 × 2.0-2.6 μm.、中央に隔壁があり2細胞、少量の小さな油球がある。それ以外の特徴は先頭画像や[別図2]の菌と明瞭な区別点を見出し難い。
[参考文献]
Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. vol. 1. Ascomycetes.
Dennis (1981): British Ascomycetes. Rev. ed.
Raitviir (2004): Revised synopsis of the Hyaloscyphaceae. (Scripta mycologica ; 20).
Zhuang and Liu (2007): Taxonomic reassessment of two helotialean fungi. (Mycotaxon ; 99, p. 123-131).
[最終更新日: 2019.03.22] //
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