Camarops polysperma
Camarops polysperma (Mont.) Miller
クロコバンタケ。11月13撮影。
[特徴]
子座は樹皮下に生じ、成熟すると樹皮が破れて蓋を開くように現れる。
肉厚の長円形で 2-4 × 1-2 cm. 程度。表面は黒色、全面に孔口がありわずかに突出する。
厚さは 5 mm. 程度。表面は厚さ 0.4 mm. 程度の黒色の硬い炭質の組織からなる。内部はほぼ全体が子嚢殻で占められ材木色、比較的軟らかい。--
子嚢殻は上部が細まった円筒形、子座中に一層に柵状に並び、長さ 4 mm. に及び無数の子嚢を生じる。--
子嚢は円筒形、8胞子をほぼ一列に生じる。先端構造はメルツァー液でわずかに小点状に青変する。34-40 × 3.2-5.0 μm. --
側糸は鞭状、基部で 径 2.5-3.2 μm. 程度、隔壁は認めにくく、まばらに油球を含む。先端はしだいに細まり、全長 100-150 μm. に達する。--
子嚢胞子は緑褐色、楕円形、平滑でやや厚膜、2油球を含むものが多い。 3.8-4.5 × 2.0-2.5 μm. --
子座の上面に接する部分(めくれた樹皮の下面側)には厚さ 0.5-0.8 mm. 程度の乳白色半透明の軟らかい組織がある。
34-85 × 8-20 μm. の円筒状ないし棍棒状の無色薄壁の細胞が柵状に並んでいる。樹皮がめくれた後は速やかに乾燥して痕跡状になる。
[コメント]
コナラなどのブナ科の倒木に多いが立ち枯れにも発生し、比較的普通種。
表面につやは無いが、新鮮なものは放出された子嚢胞子で子座の表面が濡れてつやがあるように見える。
表面が子嚢胞子で濡れている新鮮な子実体にはショウジョウバエの一種と思われる小型のハエが集まり、盛んに舐めるのが観察される。
表面は炭質で硬いが内部は軟らかく、子嚢殻は一つずつピンセットでつまみ出す事ができる。
子嚢胞子の先端には発芽孔が有るようだが、確認しづらい。
樹皮下面側に発達する組織については Abe (1986) では触れられていないが樹皮を押し上げるのに何等かの役割があるのではと思う。
初めて見つけたのはまだキノコに興味を持ち始めたばかりの頃で、これが何なのかまるで見当が付かず、
ナイフで縦割りにして柵状の構造を見ても、そのあまりの大きさに子嚢殻とは思えなかった。
樹皮を破って現れる前の未熟な状態を一度見てみたいものだと思っている。
[別図2] めくれた樹皮下面にある乳白色の組織。8月10日撮影。
[別図3] 断面。8月10日撮影。
[参考文献]
Abe (1986): Materials for the fungus flora of Japan (40). (Trans. mycol. Soc. Japan ; 27, p. 143-146).
[初掲載: 2004.11.19; 最終更新: 2008.08.18]