Chlorencoelia versiformis

Chlorencoelia versiformis

Chlorencoelia versiformis (Pers.) J.R. Dixon
コケイロサラタケ。9月17日撮影。

[特徴]
材上に単生ないし群生し、時に柄は分岐して複数の子嚢盤を生じる。浅い椀形から平らに開き、さらに反り返って径 1 cm. 程度になる。 子実層面はほぼ平滑で中央付近は時に皺状、黄味がかった淡オリーブ色、縁は全縁、時に外側に屈曲する。 外面はほとんど平滑、やや濃色、柄は中心生あるいはやや偏心生で比較的短く、暗褐色、わずかに粉状。肉質は比較的丈夫。-- 子嚢は円筒形、先端は肥厚し、頂孔はルゴール試薬で青変する。基部にはかぎ形構造がある。8胞子をほぼ2列に生じる。105-120 × 6-6.4 μm. -- 側糸は糸状、ほぼ上下同幅、径 3-3.5 μm.、下部には隔壁がある。上半には黄緑色の内容物がある。-- 子嚢胞子は長楕円ないしやや湾曲してソーセージ形、無色、薄壁、平滑、大型の2油球が目立つものが多い。11.4-14.2 × 2.8-3.7 μm. -- 托髄層は無色で径 2.5-4 μm. の菌糸からなる比較的密な絡み合い菌組織、表面には赤褐色の砂状物がまばらに付着し、子実下層付近では多い。 外皮層は厚さ 80 μm. 程度まで、縦長の丸みを帯びた 15 × 30 μm. 程度までの淡色の多角形細胞からなり、表面付近では短い矩形状細胞となって毛状菌糸に繋がる。 毛状菌糸は表面細胞から立ち上がり、基部付近には少数の隔壁があり、先端は丸く、時に棍棒状に膨らみ、先端細胞は 11-30 × 4.2-8.6 μm.、黄緑色の内容物がある。 托組織は水酸化カリウム水溶液中で淡黄オリーブ色の色素を溶出する。

[コメント]
ブナと思われる比較的古い倒木に発生していたもの。材の青変性はない。 同属の コケイロサラタケモドキ に比べてやや北方に分布するようである。 「原色日本新菌類図鑑 II」(保育社, 1989)では、外面には "綿毛状菌糸を生じ" と表現されているが、外面はルーペ下でもほぼ平滑に見える。 托表面の立ち上がった細胞は比較的短く直線的でほぼ均一に並ぶので、綿毛状と言うよりも柵状と表現した方が良いように思える。 "Fungi of Switzerland. v.1. Ascomycetes" (1984) では "palisade-like arrangement" と表現されている。 ただし、検鏡図(no. 201. Chlorosplenium versiforme として p. 177, fig. D として掲載されているもの)はあまり正確ではない。

[参考文献]
Dixon (1975): Chlorosplenium and its segregates II. The genera Chlorociboria and Chlorencoelia. (Mycotaxon ; 1(3). p. 193-237).

[初掲載日: 2025.10.12] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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