Ciboria amentacea

Ciboria amentacea

Ciboria amentacea sensu Groves & Elliott.
キボリア アメンタケア? ハンノキ類の雄花序に生じる菌核菌類。3月27日撮影。

[特徴]
子実体は子座化した古い雄花序から1ないし数個程度発生する。花序は普通は軸の部分のみが残っていて黒変している。 子嚢盤は有柄、初めは球形、後に椀形から平盤状になり、直径 4-14 mm.、子実層面はベージュ色ないし淡褐色。 縁は全縁だが、若い子実体ではやや毛羽立って見える。外面は殆んど平滑で同色。柄は細く径 1mm. 程度。 菌核が地中深いところにある場合は長いもので 3 cm. 以上にまで伸びる事があるが、普通は 1 cm. 未満の物が多い。-- 子嚢は円筒形、8胞子をほぼ一列に生じる。先端は肥厚し、頂孔はメルツァー液で青変する。142-188 × 10.0-12.0 μm. -- 側糸は糸状、基部付近で分岐し、隔壁がある。径 2.5-3.0 μm.、内容はほぼ無色、先端は僅かに膨らんで 5.0-6.0 μm. までになる。-- 子嚢胞子は広紡錘形ないし卵形でやや左右不対称。無色薄壁で両端近くに細かな泡状内容物が少量認められる。 射出された胞子は薄い膜状の皮膜に包まれているが、一端が破れて外に飛び出す。9.5-12.8 × 6.0-7.5 μm. -- 子実下層はやや褐色を帯びる。托髄層はやや平行に走る絡み合い菌組織で、菌糸は無色、径 3-10 μm. 程度。 外皮層は厚さ 150-200 μm. だが髄層との境界は不明瞭。やや角ばった球形菌組織からなり、各細胞はほぼ無色で(あるいは僅かに褐色を帯びる)、 径 12-70 μm. になる。外皮層表面には、径 2-4 μm. 程度の無色の菌糸が走る事がある。

[コメント]
早春、寄主の花芽の展開より少しだけ早目に発生が始まる。 図示したものはオオバヤシャブシ (Alnus sieboldiana) の雄花序から発生しているが、コケに隠れていて見えない。 胞子の皮膜は胞子が抜けた後も空になって残り、ちょうど枝豆の薄皮のような感じに見える。
C. amentacea だとずっと思ってきたが、少し胞子が大きめなのが気になる。 ヨーロッパの文献を見ると、子嚢胞子は 10 μm. 程度かそれ以下とするものが多い。近似種がいくつかあり Groves and Elliott (1961) では、 北米産の種について胞子が 10 μm. を超える大きめの種を C. amentacea、10 μm. を超えない小さめの種を C. caucus とする一方、 Schumacher (1978) では C. caucus を広めに取り C. amentacea をそのシノニム扱いにした上で、 寄主に拠って分化型 (forma specialis) を分け、北アメリカ産のものは別種としている。 京都でオオバヤシャブシに発生する菌はむしろ北アメリカ産の計測値に近いと思うので、今は上記の学名を当てておく。

[別図2] 菌核をコケの下から掘り出した状態。4月2日撮影。
[別図3] オオバヤシャブシ樹下。3月6日撮影。

[参考文献]
Breitenbach and Kränzlin (1984): Fungi of Switzerland. vol. 1.
Dennis (1981): British Ascomycetes. Rev. ed.
Groves and Elliott (1961): Self-fertility in the Sclerotiniaceae. (Canadian journal of botany ; 39, p. 215-231).
Schumacher (1978): A guide to the amenticolous species of the genus Ciboria in Norway. (Norwegian journal of botany ; 25, p. 145-155).

[初掲載日: 2004.07.27, 最終更新日: 2012.03.26]