Crassitunica tubakii
Crassitunica tubakii Y.-J. Zhao & Hosoya
アオキバニセキンカクビョウタケ。9月5日撮影。
[特徴]
枯葉の両面に少数がやや群生する。葉脈上、あるいは葉脈に隣接して生じることが多い。
子実体は有柄ビョウ形でやや肉厚。縁はやや内屈するが後には平らになる。子実層表面は淡肉色ないしベージュ色、時に淡黄褐色ないし僅かにオリーブ色を帯びる。直径 1.5-4.0 mm.
外面は白っぽく無毛だがルーペ下では微粉状に見える。柄も同色、短く比較的太いが基部は急に細くくびれるものが多く、黒色の小さな子座が認められる。肉質はやや硬い。--
子嚢は円筒形、先端は肥厚し、メルツァー試薬でわずかに小さく青変するか、もしくはほとんど青変しない。8胞子をほぼ一列に生じるが後には2列になって先に固まる。102-120 × 11.2-17.1 μm. --
側糸は糸状、基部付近で分岐し隔壁がある。ほぼ無色で先端はほとんど膨らまない。径 2-3 μm. --
子嚢胞子は左右不対称の卵形ないしやや豆形。大きな2油滴と多くの小油滴を含むが後には細かい泡状または全体に不明瞭となる。
子嚢中ではほとんど無色で平滑だが、のちには褐色を帯び、表面は細かい皺状になる。13.2-14.9 × 5.7-6.9 μm. --
托組織髄層は淡黄褐色の菌糸からなる絡み合い菌組織。菌糸は径 3 μm. 程度、やや表面が粗造に見えるものがある。
外被層は厚さ 30 μm. 程度の丸みを帯びた多角形菌組織で縁付近では矩形状、やや厚膜、ほぼ無色の直径 5-10 μm. 程度の細胞からなる。
最外層の細胞からは乳頭状あるいは短い毛状の突起が伸びるものがある。
[コメント]
夏から秋にかけてアオキ (Aucuba japonica) の枯葉に発生する。落葉にも見られるが、枝についたまま立ち枯れて黒変した枯葉に発生していることが多い。
Korf (1958) が Lambertella brunneola (Pat.) Le Gal と同定したものと同じだと思うが、Dumont (1971) によると L. brunneola とは別種であるという。
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当初 Lambertella? sp. としていたが、Zhao (2014) によって、新属新種 Crassitunica tsubakii Y.-J. Zhao & Hosoya と命名されているので修正した。
ただし、この論文には2013年1月1日以降に発表される学名に必要な "認定された学名の登録機関の発行する識別子 identifier" (ICN 深圳規約, F.5.1) が引用されておらず、正式発表とはみなされない。
種形容語の tsubakii は、Korf と共にこの菌を採集した椿啓介博士に因んでいるのだが、氏は学名の命名や英語論文などでは一貫して "Tubaki" のローマ字表記を使用しておられたし、
Dictionary of the fungi (10th ed., 2008) でも見出し語は "Tubaki Keisuke" なので、個人的には少し違和感がある。
[2019.11.25 追記]
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Zhao and Hosoya (2021) によって正式発表され、同時に和名も与えられたので修正した。種形容語の綴りは tsubakii から tubakii に変更されている。[2021.09.24 追記]
[別図2]
10月7日撮影。
[別図3]
10月7日撮影。 子実体基部は細く括れて黒くなる。
[参考文献]
Dumont (1971): Sclerotiniaceae II. Lambertella. (Memoirs of the New York Botanical Garden ; 22(1), p. 1-178).
Korf (1958): Japanese discomycetes notes III. On a species of Lambertella (Sclerotiniaeceae). (Sci. rep. Yokohama Nat. Univ. ; II(7), p. 17-18).
Zhao (2014): Taxonomic study of Lambertella (Rutstroemiaceae, Helotiales) and allied substratal stroma forming fungi from Japan. (Ph.D. thesis, University of Tsukuba, 2013).
Zhao and Hosoya (2021): Crassitunica tubakii gen. et sp. nov., a new taxon in the family Sclerotiniaceae s. lat. (Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B ; 47(2), p. 51–57).
細矢・保坂 (2014): 第II期調査で得られた皇居吹上御苑の子嚢菌類. (国立科学博物館専報 ; 49, p. 103-111).
[初掲載日: 2004.09.12, 最終更新日: 2021.09.24] //
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