Creosphaeria sassafras?
Creosphaeria sassafras (Schwein.: Fr.) Ju, Martin & Rogers?
落枝上の核菌類。ヒイロミコブタケ? 9月12日撮影。
[特徴]
地上の落枝に発生する。子座は表皮下に発達し、表皮を破って上半が露出する。普通は子嚢殻を単生するが時に2-3個の子嚢殻が並ぶ事がある。
表面は殆んど黒色でつやは無く、上面は小さな平盤状になり中央に子嚢殻の孔口がある。孔口はほとんど突出しないか小さく窪み、やや淡色に見える。
子嚢殻の周辺の子座は明橙褐色でやや粉状。--
子嚢殻は殆んど球形、径 800-950 μm.、殻壁は黒色で炭質。--
子嚢は長円筒形、8胞子をほぼ1列に生じる。下半は尾状に細長く伸び、先端にはメルツァー液で青変するリング状の構造がある。126-172 × 4.5-5.0 μm. --
無色鞭状の長い側糸らしいものが多数観察できる。--
子嚢胞子は長楕円形からやや円筒形で僅かに左右不対称、暗褐色、平滑。未熟時には2-3個の油球を含むが成熟胞子では目立たない。
ほぼ全長に亘る直線状の発芽スリットがある。8.5-12.6 × 2.8-3.4 μm.
[コメント]
シイとクスノキを中心とした社叢林内、地上の枯枝に発生していた物。枝には独特の芳香があり、クスノキ (Cinnamomum camphora) に間違いない。
子座中に普通一個の子嚢殻を生じ、子嚢殻周辺の子座が橙色を呈する等の特徴から Creosphaeria 属だろうと思う。
クスノキ科の植物に発生する Creosphaeria sassafras(ヒイロミコブタケ)が日本でも記録されていて、特徴がよく似ている。
いくつかのサイトで Creosphaeria sassafras が紹介されているが、
Home of the Xylariaceae と
Pyrenomycetes from southwestern France
で図示されている子実体の肉眼的特徴がかなり様子が異なるのが気になる。私の採集した菌の特徴は前者とほぼ一致する。
[参考文献]
安部, 土居 (2000): 吹上御苑で採集された木材腐朽性子嚢菌類(子嚢菌門, クロサイワイタケ目). (国立科博専報 ; 34, p. 235-239)
[初掲載日: 2011.01.11]