Cryptomycina sp. no.1
Cryptomycina sp. no.1
クリプトミキナ属菌。4月16日撮影。
[特徴]
子座は表皮細胞中に形成される。
子嚢果は僅かに隆起した黒色線状。0.3-0.5 × 1-3 mm. 程度、時に融合して全長 1 cm. 程度になるものもある。高さは中央付近で 100 μm. 未満。
両端は丸く表面は平滑でややつやがある。後に中央に線状に亀裂を生じるが子実層は殆んど露出しない。子嚢は子嚢果底部から一層に並んで生じる。--
子嚢は棍棒形、先端は肥厚して小さな乳頭状に突出する。メルツァー試薬に呈色しない(僅かに青変するように見えるものもある)。
8胞子をほぼ2列に生じる。40-51.5 × 8.5-10 μm. --
側糸は糸状、子嚢よりやや長く、上下同幅、径 0.5 μm. 程度。--
子嚢胞子は棍棒形ないし桿菌状で両端は丸く、下端がやや細く、中央部は僅かに括れる。無色、薄壁。両極付近に比較的大きな油球がある。11.5-14.8 × 3.4-3.8 μm. --
子嚢果の殻壁は黒褐色小型の密な多角形細胞で構成されるが、詳細を確認しがたい。
上面に生じる亀裂部分には特別な構造は観察できず、単純に組織が裂開しているように見える。
子嚢果上部内面からは無色薄壁、長さ 7-9 μm. の円錐形細胞が子実層に向かって生じ、子嚢果内面側部には径 3-4 μm. の淡褐色の菌糸が柵状に並ぶ。
[コメント]
ゼンマイ (Osmunda japonica) の枯れた葉柄に発生していたもの。
ヨーロッパ等で知られている Cryptomycina filicina (Fr.) L. & K. Holm は同じく Osmunda 属に生じ特徴が良く似ているが、子嚢胞子が小型で子嚢の先端リングはメルツァー試薬で青変すると言う。
Cryptomycina 属は以前は Rhytismatales に所属させることが多かったが、最近(Index Fungorum 等)は Sordariomycetes に置き、下位分類については位置不明とされている。
[別図2]
4月23日撮影。採集時はやや未熟だったので湿室に入れて追熟させた。子実体上面に淡色線状の亀裂が見える。
[参考文献]
Holm and Holm (1978): Some pteridicolous Ascomycetes. (Bot. Notiser ; 131, p. 97-115).
Sydow (1923): Mycotheca germanica. Fasc. XXXVII-XLI. (no. 1801-2050). (Annales mycologici ; 21(3-4), p. 165-182).
[初掲載日: 2017.08.04]