Cudoniella clavus
Cudoniella clavus (Alb. & Schw.) Dennis.
ミズベノニセズキンタケ。5月12日撮影。
[特徴]
水辺の落枝などに単生あるいは群生する。
頭部はそろばん玉形に広がって上面は凸形、あるいは下面が反り返って上面は釣鐘形に丸く膨らみ、直径 3-10 mm.。
子実層面は平滑、僅かに紫色をおびたクリーム色ないし淡ベージュ色、縁は全縁、外面は無毛でややざらついた感じ、ほぼ同色あるいはやや白っぽい。
柄は円筒形、高さは5-30 mm. 程度、直径 1-2 mm. で基部はやや膨らむものが多い。
白っぽく、ほぼ平滑だが下半は微毛を生じる事が多く、時にほぼ全体に及ぶ。全体に軟肉質で、柄の髄部は水っぽいゼリー状。--
子嚢は棍棒形、先端は肥厚し、頂孔はメルツァー液で僅かに青変するか、あるいは青変しないが KOH で前処理をすれば明瞭に青変する。
8胞子を初め1列に生じるが後には不規則な2列になって先に固まる。88-110 × 6.8-10 μm. --
側糸は糸状、径 1.5-3.2 μm.、殆んど上下同幅、上半には無色の細かい泡状の内容物がある。--
子嚢胞子は楕円形ないし長卵形、やや左右不対称、無色、平滑。両端付近に小さく不明瞭な泡状の内容物がある。9.0-13.4 × 3.6-5.2 μm. --
托髄層は無色薄壁の細胞からなる絡み合い菌組織、各細胞は膨らんで径 4-20 μm. 程度、ゼラチン質に包まれているように見える。
外皮層の近くでは細めの細胞がやや平行に走る。
外皮層は無色薄壁の細胞からなる矩形菌組織、厚さ 120-200 μm. 程度、各細胞は 15-25 × 40-70 μm. 程度。
柄の毛状菌糸は表面から立ち上がり、30-250 × 6-15 μm.、薄壁、隔壁があり基部付近では吻合、分岐が見られる。
緩やかに屈曲して絡み合い、先端は丸い。各細胞に少数の小さな油球あるいは結晶状の物質を含む。
[コメント]
春に水辺の半ば水に浸った落枝等に発生し、頭部は水面上に出る。
特に基質の選択性は無いようで細い落枝、各種広葉樹落葉やその葉柄、イタドリのようなやや硬めの草本性の茎等に生じ、
水深数ミリ程度の安定した僅かな流れがある所に多く見られる。
子嚢頂孔は非アミロイドとする図鑑が殆んどだが、少なくとも京都で見つかるこのキノコの子嚢頂孔は KOH の前処理により青変し、
前処理無しでも僅かに青変する場合が多い。最初は C. clavus とは別種かとも考えたが、
KOH 前処理によるアミロイド反応は Huhtinen (1985) でも報告されているのでミズベノニセズキンタケで間違っていないと思う。
発生環境によって色合いなど見た目が少し違うものがあるけれども、同一種の変異だろう。
[別図2]
5月1日撮影。
[参考文献]
Huhtinen (1985): Mycoflora of Poste-de-la-Baleine, Northern Québec. Ascomycetes. (Naturaliste Canadien ; 112, p. 473-524).
[初掲載日: 2004.07.25, 最終更新日: 2015.05.03]