Cystotheca wrightii

Cystotheca wrightii

Cystotheca wrightii Berkeley & Curtis
アラカシの紫かび病菌。9月14日撮影。

[特徴]
葉の裏面に不整形の密な菌叢を生じ、径 1 cm. 程度から融合してほぼ全面に拡がる事も多いが、葉脈上にはほとんど生じない。 初め淡灰褐色で微粉状、後には濃褐色から紫褐色の微ビロード状になる。葉の表側は黄色く退色する。 表生菌糸は無色、薄壁、隔壁と分岐があり網状に拡がる。径 3.2-5.2 μm.。菌叢中に裂子嚢殻と鎌形の剛毛状菌糸が密に生じる。 先端と末端の弦の長さは 94-175 μm.、最大径は 11.5 μm. までになる。-- 裂子嚢殻は球形、不明瞭な短い柄がある。濃褐色、表面は平滑で付属糸は無く、径 60-72 μm.。 殻壁は内外の2層からなり、プレパラート中で押し潰すと容易に分離する。 外壁はやや厚膜の径 7-17 μm. の多角形の細胞からなり、内壁は無色で厚膜、径 10-15 μm. の多角形の細胞からなる。一個の子嚢を生じる。-- 子嚢は広卵形ないし楕円形、明瞭な短い柄がある。厚さ 2.5 μm. 程度の厚膜だが、先端部ではやや薄くなる。6-8個の子嚢胞子を生じる。74-85 × 45-56 μm. -- 子嚢胞子は長円形ないしたわら形、無色、薄壁、平滑、内容物は泡状、18.7-20.5 × 10.1-12.8 μm. -- 鎌形の剛毛は初めはほとんど無色、後には褐色になる。平滑、厚膜、先端はやや尖り、基部以外に隔壁は無く、ほぼ一様だが、時に細い芯状の濃色の内容物がある。-- 分生子柄は表生菌糸から単生して立ち上がり、柱状、下方に隔壁があり、径 7-12 μm.、高さは 100-120 μm.、先端に数個の分生子を鎖生する。 分生子は中央が膨らんだ樽型、無色、薄壁、平滑、大きな液胞があり、フィブロシン体を含む。31-48 × 21.5-24.5 μm.

[コメント]
アラカシ (Quercus glauca) に発生したもの。市街地でも普通に発生していて、よく目立つ。 春、寄主の新葉の展開後間もなく淡褐色の菌叢が拡がり始め、薄い白粉状に分生子を生じる。その後濃褐色になり子嚢殻が形成、成熟する。 大谷 (1988) では分生子は "発育良好なフィブロシン体を有す" とあるが、小型のフィブロシン体を少量含むものが多かった。

[別図2] 5月1日撮影。分生子が形成されている菌叢。

[参考文献]
大谷 (1988): 日本菌類誌. 第3巻、子のう菌類. 第2号、ホネタケ目・ユーロチウム目・ハチノスカビ目・ミクロアスクス目・オフィオストマキン目・ツチダンゴキン目・ウドンコキン目.
高松 (2012): 2012年に発行される新モノグラフにおけるうどんこ病菌分類体系改訂の概説. (三重大学大学院生物資源学研究科紀要 ; 38, p. 1-73).

[初掲載日: 2021.05.24] // [サイトのトップへ] // [掲載種一覧表へ]
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